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米軍、運用を最優先 艦載機移転開始 長崎原爆の日 重なる

 9日に開始された、米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転。台風5号の影響で、第1陣のE2D早期警戒機5機は、米側が通告した「6日ごろ」から3日ほど遅れて到着した。ただ、山口県や岩国市は艦載機の厚木基地出発後まで移転開始がいつになるか把握できず、「原爆の日」にも重なった。あらためて米軍の運用最優先の現実が浮き彫りとなった。(松本恭治、和多正憲、折口慎一郎)

 「(午前)10時45分ごろ、厚木基地から飛び立った」。この日、県と市に中国四国防衛局からE2Dの飛来情報が入ったのは離陸の直後。前日には、空母ロナルド・レーガンが米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)へ9日昼すぎに入港することも横須賀市へ伝えられていたが、艦載機移転のより具体的な日時は明かされなかった。

 移転開始時期について米側は4日、「6日ごろ」と日本側に通告。広島原爆の日と重なるため、広島県や広島市、廿日市市などの地元自治体や被爆者団体は反発した。中国新聞が在日米海軍司令部に「8・6」への配慮を問うたところ、同司令部は「保安上の理由で運用スケジュールは言及しない」と回答した。

 結果的に6日の移転はなかったが、E2Dは6、7の両日で厚木基地へ飛来していた。その理由について、同司令部は中国新聞の取材に「台風5号による悪天候を避けるためで、天候回復後には岩国に移る」と説明。一方、山口県と岩国市への事前の情報提供はなく、県市とも「移転がいつかは分からない」と繰り返していた。

 E2Dの第1陣が岩国基地へ到着したのは、長崎原爆の日の9日正午すぎ。約1時間前の午前11時2分には、県内でも多くの被爆者や市民が黙とうをささげていた。福田良彦市長は報道陣に「原爆投下の時間は避けたので、一定の配慮があったと思う」と話した。

 一方で、軍事評論家の前田哲男氏は「米軍の運用に、『原爆の日』への配慮を挟み込む余地はない。軍事的合理性の下、極めて事務的に移転は進められる」とみる。「厚木の負担軽減」とされた艦載機移転の目的についても、朝鮮戦争(1950~53年)時に岩国から軍用機が連日飛び立った経緯を踏まえ、「艦載機移転は『朝鮮戦争を思い出せ』という北朝鮮へのメッセージになる。緊迫化する半島情勢を見据えたものだ」と指摘する。

(2017年8月10日朝刊掲載)
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