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オスプレイ安全宣言 市長・知事 苦渋の「追認」

 山口県の山本繁太郎知事と岩国市の福田良彦市長は19日、森本敏防衛相との会談で、米海兵隊岩国基地(岩国市)での垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの試験飛行について安全性に懸念を表明する一方、国の決定事項として事実上、追認する考えを示し、国防を担う国の責任で対処するよう要請した。

 岩国市役所で森本防衛相と会談した福田市長は「オスプレイへの市民感情を考えると、政府の最終的な判断は極めて残念」とした。一方、全責任を政府が持つ覚悟を要請した上で、「準備飛行が延長されたり恒常的な配備につながったりしないよう、必要最小限の飛行にとどめてほしい」などと注文した。

 その後、県庁で森本防衛相と会談した山本知事も「政府の方針を聞き、はい分かりましたとは申し上げられない」と強調。オスプレイ配備に関し「東アジアの平和と安全を維持するための意義を理解している」としながらも県民の安全性への懸念が完全に払拭(ふっしょく)しきれていない現状を挙げた。

 知事、市長とも住民の不安をアピールし、試験飛行を容認しないが反対もしない点で足並みをそろえた。結果、法的に対抗手段を持たない自治体の苦悩と政府への協調路線がにじむ会談となった。

 試験飛行を事実上、容認したのかという取材陣の質問に、山本知事は「安全性への懸念は明白に申し上げた。だから政府が方針を決めてやるというのなら、何事があろうと政府の責任で対処していく考えと私は受け止めた」と述べた。(金刺大五、酒井亨)

広島の首長、反発と不安 低空飛行訓練ルート 「安全性に問題」

 日米両政府が米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの「安全宣言」を発表した19日、米海兵隊岩国基地に隣接し、米軍機の低空飛行訓練が絶えない広島県内の首長や市民団体から反発や不安の声が相次いだ。岩国基地で始まる試験飛行の中止を求める意見も出た。

 政府は、モロッコと米国フロリダ州で起きた墜落事故の原因を「人的要因」とする。低空飛行の目撃日数が昨年度、県内市町で最多の171日に上った北広島町の竹下正彦町長は「住民は騒音や事故への不安に苦しんでいる。ミスが多発するようなら安全とはいえない」と訴えた。

 廿日市市の真野勝弘市長も「安全性に問題がある」と指摘。住民の不安が取り除かれない限り、飛行訓練をしないよう求めた。

 同市の「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」は、航空法の安全高度150メートル以上の高度を守るとする安全策を疑う。坂本千尋事務局長は「現在の訓練でも守られていない例がある」と指摘した。

 一方、大竹市の入山欣郎市長は「国は安全対策と国防上の必要性について十分な説明責任を果たし、住民の安心安全に最大限の配慮を」と要請。広島市の松井一実市長は「市民生活に問題が生じるなら国に適切な対応を求めたい」とした。

 中国四国防衛局の担当者は20日に県と大竹市を訪れ、安全宣言の内容を説明する。湯崎英彦知事は「事故原因を人的要因とするならどういう安全対策をするか、十分な説明が必要だ」と強調した。

(2012年9月20日朝刊掲載)

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