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「希望の球団」海外発信 仏ルモンド紙特派員 広島で歴史取材

たる募金・新球場…市民と絆

 セ・リーグ連覇を目指す広島東洋カープの戦いぶりは、海外メディアの特派員の関心も集めている。フランスのルモンド紙特派員フィリップ・メスメールさん(45)=東京=は、原爆の日を前に広島市を訪れ、カープの歴史を取材。原爆からの復興の象徴として歩んだ市民球団の記事を同紙に掲載し、初めて試合も観戦した。(江川裕介)

 球団設立時に選手集めに奔走した石本秀一監督や、たる募金による市民の協力、1975年のセ・リーグ初優勝、マツダスタジアム(広島市南区)の完成―。6日付の記事はインターネットで世界に発信され、焼け野原から復興した市民に希望を与えてきた球団の足取りを伝えている。

 7月末に広島入り。西区の泉美術館で写真展「語り継ぐ カープ物語」(同美術館、中国新聞社主催)を見学し、50年に始まった球団の歩みを学んだ。カープと地域の関わりに詳しい中国新聞社の社員にも話を聞いた。

 今月1日には、真っ赤に染まったスタジアムのスタンドで、全国広島東洋カープ私設応援団連盟の新藤邦憲会長(69)を取材。「育成が実って黄金時代を迎えたんよ」「素晴らしい球場ができてスターも育っとる」などと聞き取った。2日までの滞在を終え「市民とカープの結び付きの深さに驚いた」と振り返った。

 パリ出身で、2002年に来日。05年に特派員となった後は、原爆の日に合わせて広島入りを重ね、被爆者の証言の聞き取りなどをした。復興の軌跡をたどる中、カープと市民の関係に興味が湧いたという。

 母国での野球人気は低い。しかし、日本でテレビ観戦を続けるうち、とりこになった。「選手たちから、野球を楽しんでいる姿勢が伝わってくる」と感じるカープが一番のお気に入りだ。「他の球団とは雰囲気が違う。リーグ連覇も、その先の33年ぶりの日本一も、きっと果たしてくれる」

(2017年8月17日朝刊掲載)

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