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社説・コラム

『記者縦横』 反核世論 盛り上げたい

■報道部 永山啓一

 「日本のメディアにひと言、話しておきたい」。3日から9日にかけ、広島、長崎両市であった二つの原水爆禁止世界大会。全日程の終了後、米国の市民団体代表が声を掛けてきた。

 ノーベル平和賞受賞団体でもあるアメリカフレンズ奉仕委員会のジョゼフ・ガーソンさん。目前の危機への言及が少なかった両大会の在り方に疑問を感じたのだろう。

 両大会は、7月の国連会議での核兵器禁止条約採択を喜ぶ前向きな議論を中心に幕を閉じた。一方、会場の外では北朝鮮のミサイル開発を巡り米朝の応酬が激化。トランプ米大統領は「世界が見たこともない炎と怒りに見舞われる」とけん制し、北朝鮮はグアムへのミサイル発射計画で応じた。

 ガーソンさんは「朝鮮半島情勢はゆっくり進むキューバ危機のようだ」と、米国と旧ソ連が核戦争の寸前までいった1962年の深刻な状況を例に訴えた。

 米国では禁止条約についての報道は少なく、核兵器廃絶を求める声も広がりを欠く。半面、北朝鮮を脅威とし、軍備増強を求める意見が増えているという。「軍拡競争か、核兵器廃絶か、方向性を決めるのは世論の力だ」と強調。「唯一の戦争被爆国である日本の世論を盛り上げてほしい」と強いまなざしを向けられた。

 日本原水協などは9月20日の禁止条約の署名開始に合わせ、世界でアピール行動を始める。この動きが軍拡を阻止し、核兵器廃絶の一歩になるよう報道に携わっていきたい。

(2017年8月18日朝刊掲載)

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