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[変わる岩国基地] 米軍との飛行運用協議会 91年以降なし 市と開催の必要性検討へ

 米軍機の運用ルールなどを、地元自治体と米海兵隊岩国基地(岩国市)が話し合う協議会が1991年以降、四半世紀以上も開かれていない。山口県の村岡嗣政知事は17日、米海軍厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機移転開始を受け、岩国市と開催の必要性を検討する考えを示した。一方で、飛行自粛期間などを定めた協議会の確認事項に強制力はなく、順守されないケースも。極東最大級の米軍基地へ変貌する実態に即した対応が求められる。

 14日、厚木基地から移転予定の艦載機FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機が爆音を響かせ、岩国基地で離着陸を繰り返した。同基地に移転したばかりのE2D早期警戒機も離陸し、上空を旋回。市によると13~16日の4日間で、市民から「飛行がうるさい」「盆になぜ飛ぶのか」などの苦情が計33件あったという。

 基地側と市、県、国でつくる「岩国日米協議会」の確認事項には、「盆の13日から16日は飛ばないようにする」「市街地上空の飛行高度は4千フィート(1219メートル)とする」などと運用ルールを明記。今回の飛行について米軍側は「必要不可欠な訓練」としており、これまでも米軍側の運用上の理由で確認事項に反する飛行は見られた。

 協議会は71年に発足し、航空機騒音や事故、米兵犯罪など「日米相互に影響する現地の諸問題」などを話し合う場だ。市民生活に影響する16項目を「確認事項」として合意。ただ、91年以降は一度も開かれず、沖合移設された滑走路が2010年に運用開始された後は、実態とそぐわない項目も存在している。

 村岡知事は17日の定例記者会見で「協議会は長年開かれていないが、さまざまな機会を通じ、運用確認も含め必要な情報交換をしている」と強調。その上で、今月9日に始まった艦載機移転を踏まえ「新たに米海軍も(基地に)入り状況も変化するので、協議会の開催が必要か市の意見を聞きたい」と述べた。

 市基地政策課は「さまざまな形で市と基地側が協議する場はある。協議会は必要性があれば開きたい」としている。(和多正憲、馬上稔子)

<岩国日米協議会での主な確認事項>

▽安全上許す限り工場や市街地の上空を飛行しない
▽市街地上空の飛行高度は4千フィート(1219メートル)とする
▽滑走路運用時間(午前6時半~午後11時)外の使用は市に通報する
▽盆(8月13~16日)は飛ばないようにする
▽正月三が日は訓練をしない
▽午後10時以降のタッチ・アンド・ゴー等は禁止
▽着艦訓練は1週間前に市に通報し、原則午後9時以降はしない

(2017年8月18日朝刊掲載)

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