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[変わる岩国基地] 災害支援 米軍が存在感 県や市 協定締結の動き

 米海兵隊岩国基地(岩国市)で、災害時に米軍機が被災地支援に向かうケースが増えている。山口県など米軍基地・施設のある全国15都道府県でつくる渉外知事会は8月、米軍側との相互協力を定める災害時特別協定の検討を確認。一方、岩国市は独自に基地側と火災や災害時の応援協定を結んでおり、新たに防災協定の締結も協議している。

 「2011年の津波でも重要な役割を果たした。数え切れない命を守ってきた」。昨年5月27日、当時のオバマ米大統領は広島訪問時に岩国基地を訪ね、東日本大震災での人道支援をたたえ、海兵隊員たちを激励した。同基地を「日米の信頼と協力、友情の例」と称し、災害救援での自衛隊との連携にも触れた。

 震災直後の11年6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、米軍の救援活動「トモダチ作戦」の成果を踏まえ、米軍と地方自治体との災害時の協力の重要性を確認。オバマ氏訪問の約1カ月前にも、同基地を拠点として、熊本地震の被災地へ垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが物資輸送を始めていた。

 日米間での災害時の連携は全国の在日米軍基地で進む。渉外知事会会長の黒岩祐治神奈川県知事は今月2日の総会で、災害時を想定した在日米軍との特別協定の検討を提案。副会長の翁(お)長雄志(ながたけし)沖縄県知事も理解を示した上で「防災ということで基地機能強化が進む懸念もある」とくぎを刺した。

 背景には「災害対応のため在日米軍は必要」との認識が広がり、さらなる基地負担増につながりかねないとの沖縄県側の懸念がある。黒岩知事が示した試案でも、災害時の相互応援や地域レベルでの協議体制の設置に加え、米軍が日本の空港や港湾を緊急利用する際の条件設定や相互協力が基地機能強化に結び付かないよう歯止めをかける規定の導入も明記している。

 山口県の村岡嗣政知事は17日の記者会見で今回の試案について「有意義な議論となるよう協力したい」と説明。一方、地元の岩国市に対しては以前からの市と基地側との相互協力を踏まえ、「地域レベルの協議体制の必要性も含め、市の意見を聞きたい」と述べた。

 実際、市と岩国地区消防組合、基地側は02年に「火災や災害が発生した場合、相互応援で被害を軽減する」ことを目的とした「消防相互応援協定」を結んでいる。これまで同協定に基づく出動実績はないが、市危機管理課は「応援協定を見直す中で、発展的に防災協定を締結することを基地側と協議中」としている。(和多正憲)

トモダチ作戦
 2011年3月11日に発生した東日本大震災で、被災地救援に当たった米軍の活動。空母ロナルド・レーガンを中心とする艦隊を東北地方沖へ派遣し、震災発生2日後の3月13日から艦載ヘリコプターを使い捜索活動や支援物資の輸送を開始。在日米軍が物資輸送や復旧作業に従事した。

(2017年8月27日朝刊掲載)

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