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学んだ被爆体験描きスライド化 愛媛の高校教諭今井さん 生徒と継承

 愛媛県今治市の今治明徳高矢田分校の教諭今井省三さん(52)が、2年前に聞いた廿日市市の被爆者、寺本貴司さん(83)の「あの日」の記憶を伝えるため、スライドを作った。生徒が使い、地元で語り継ぐ。(野田華奈子)

 スライドでは、寺本さんが10歳の時、爆心地から約1キロの広島市広瀬北町(現中区)で被爆した状況や、近所の人に背負われて逃げる場面などを絵で表現。全身に大やけどをした人が水を求めてさまよう姿も描く。

 今井さんは2015年8月、顧問を務める分校の人権委員会の研修で当時の3年生2人と広島を訪れ、寺本さんの証言を聞いた。「被爆者が語るのが年々難しくなる中、被爆体験のない人が伝承しなければならないと知り、形に残すのは今しかないと思った」。原爆資料館(中区)の展示資料などを参考に伝承の素材として16年3月に完成させた。

 今月10日、人権委の現3年生4人と原爆資料館を訪れ、寺本さんの前で発表した。寺本さんは「記憶を残してもらえるのは非常にありがたい」と感謝。原爆の基礎知識などは念入りな事実確認が必要だとアドバイスもした。

 小田果朋さん(17)は「もっと原爆を学び、伝えたい」と意欲的。大沢郁さん(17)は「被爆者の思いを無駄にせず、この世から核兵器をなくしたい」と決意した。今後は内容を見直し、12月に他校を交えて今治市内で開く人権委員の研修会などで披露を予定する。

(2017年8月27日朝刊掲載)

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