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PAC3訓練 緊迫の中 「ミサイル」後も続行 岩国で空自

 航空自衛隊は29日、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の機動展開訓練を岩国市の米海兵隊岩国基地で実施した。米軍基地では初めて。基地への立ち入りは、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した直後のタイミングとなり、緊張した雰囲気の中でミサイル迎撃の手順を確認した。

 空自高良台分屯基地(福岡県久留米市)所属の第2高射群第8高射隊の隊員30人が参加。北朝鮮が弾道ミサイルを発射してわずか2分後の午前6時、PAC3の発射機など関係車両11台が業者用の門から次々と基地へ入った。

 報道陣を乗せたバスが後に続いた。間もなく、同乗した空自の報道担当者の携帯電話に着信があり、西部航空方面隊司令部(同県春日市)からミサイル発射情報が伝えられた。「訓練はどうしますか」と問うと、司令部は「続行」の指示。部隊側も情報を踏まえた上で訓練に臨んだ。

 車列はそのまま基地内の旧滑走路に到着し、同6時53分に発射態勢を整える訓練を開始。各車両が配置につくと、隊員が慌ただしく動き回った。目標物の捜索や追尾を担うレーダー装置に電源ケーブルを接続。動作確認の後、訓練用ミサイルを積んだ発射機やレーダーを上空に向けた。同7時27分に一連の作業を終えた。

 訓練を指揮した第8高射隊の兵藤浩太郎隊長は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえ「PAC3部隊の訓練を今後も推進しなければならない」と口元を引き締めた。

 訓練はこの日朝、米軍横田基地(東京都)でもあり、弾道ミサイル防衛(BMD)の「統合任務部隊」トップを務める前原弘昭航空総隊司令官は、同基地で「まさか直前にミサイルを撃たれるとは全く予期していなかったが、機動展開の能力を示すことができた。中止は考えなかった」と語った。

 そろって報道陣に対応する予定だった在日米軍トップのマルティネス司令官は、ミサイル対処を理由に欠席した。

 同様の訓練は、米軍三沢基地(青森県)でも9月7日に予定している。(松本恭治)

(2017年8月30日朝刊掲載)

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