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谷口稜曄さん死去 ヒロシマでも悼む声

 長崎で被爆した日本被団協代表委員の谷口稜曄さん(88)が30日亡くなり、核兵器廃絶の活動をともにした広島の被爆者や、若者たちに悲しみが広がった。

 「被爆者のために力を尽くしてきた仲間を失い、非常に残念だ」。ともに日本被団協代表委員を務めてきた広島県被団協理事長の坪井直さん(92)はコメントを発表し、別れを惜しんだ。

 2人は2010年、広島市であったノーベル平和賞受賞者世界サミットでの日本被団協の特別賞授賞式に出席。16年から、核兵器を禁じ廃絶する条約の締結を全ての国に求める「ヒバクシャ国際署名」の呼び掛け人を務め、時に街頭で署名を呼び掛けてきた。坪井さんは「廃絶に向け、少なくなった人間で頑張りたい」と力を振り絞る覚悟だ。

 谷口さんが願った、核兵器禁止条約は先月、国連で制定された。もう一つの県被団協理事長の佐久間邦彦さん(72)は「制定に喜ぶ一方、核保有国や日本政府の反対など心配も消えていなかったと思う。私たちが一層頑張らねば」と言う。

 この日、都内であった国際署名連絡会では、参加者約20人が冒頭、黙とうをささげた。その1人、日本被団協代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(85)は今月10日に長崎市内の病院で見舞っていた。「会話ができず厳しいと思ったが、奇跡を願っていたのに…」

 10年、米ニューヨークの国連本部であったNPT再検討会議で、各国の政府代表に向けて演説した姿が忘れられないという。「各国の政治家にものすごいインパクトを与えた。あの体でよく頑張られた。ありがとうございました、と申し上げたい」

 国際署名キャンペーンリーダーで長崎市出身の被爆3世、林田光弘さん(25)=横浜市=は中学3年の頃に知り合った。今年2月に最後に会った際には「署名は今後もっと重要になる」と激励されたという。「思いを次の世代に伝えたい」と決意した。(水川恭輔、田中美千子)

(2017年8月31日朝刊掲載)

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