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社説・コラム

社説 北朝鮮制裁強化 負の連鎖 どう断つのか

 国連安全保障理事会が、北朝鮮に対し、石油輸入に上限を設ける制裁決議を採択した。

 制裁に慎重だった中国とロシアも賛成し、全会一致となった。3日の核実験強行から1週間余り、異例のスピードで採決にこぎ着けた。北朝鮮の暴挙に対し、国際社会が一致して圧力を強化する姿勢を迅速に示したことは評価できる。

 米国と日本が目指していた石油の全面禁輸については、対話を重視する中国に譲歩し、後退した。それでも北朝鮮にとって生命線である石油を制裁対象に加えた意味は小さくない。北朝鮮が今後も核・ミサイル開発を続けた場合、「全面禁輸」に向けて圧力を強めていく足場を得たといえる。

 決議を主導した米国のヘイリー国連大使は安保理で「これまでで最強の決議」と強調した。一方で、「北朝鮮は後戻りできない段階には達していない」と述べ、一刻も早く核・ミサイル開発の放棄に向けて具体的な行動を示すよう求めた。

 だが、北朝鮮は制裁決議が採択された場合、強力な対抗措置を講じると米国を強くけん制している。過去にも安保理決議の採決を口実に挑発行動を繰り返してきた。新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験や核実験など、再び暴挙に打って出る可能性は否定できない。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を巡っては、安保理はこれまで計8回の制裁決議を重ねてきた。にもかかわらず、意に介さない北朝鮮が核実験とミサイル発射を繰り返す悪循環から抜け出せないでいる。

 どうにかして負の連鎖を断ち切らなければならない。問われているのは、北朝鮮の行動を変えさせるだけの制裁の実効性である。

 とりわけ制裁の抜け道を提供しているとされる中国とロシアとの取引や貿易をしっかり検証しなければならない。貿易統計に表れない裏取引や、第三国を迂回(うかい)する輸出を見逃しているようでは意味がない。

 今回決議された制裁が実施されれば、北朝鮮への原油や石油精製品の輸入量が約3割削減されるという。主力産業である繊維製品の輸出禁止や派遣労働者の契約制限なども盛り込まれている。北朝鮮の外貨獲得の手段はさらに狭まるはずだ。履行の徹底が欠かせない。

 一方で、中国は8月、安保理による制裁決議の採択を受けて、北朝鮮からの石炭や海産物の輸入の全面禁止に踏み切った。さらに中国の大手国有銀行も北朝鮮の人々の送金業務を禁止するなど、独自の取引制限に乗り出している。消極的と批判されてきた制裁強化に本腰を入れ始めたとみられている。

 北朝鮮を核保有国として認めることがあってはならない。現状を放置すれば、中国やロシアにとっても重大な脅威になるのは間違いない。暴走を食い止めるには日米と韓国が結束して、北朝鮮に影響力のある中国、ロシアと調整を図りながら、核・ミサイル開発を凍結させる道筋を探るしかない。

 経済制裁は、単なる懲罰ではない。北朝鮮を対話に向かわせるための圧力であることを決して忘れてはなるまい。朝鮮半島の危機に直面している日本にとって、対話の再開に向けた役割と責任は重い。

(2017年9月13日朝刊掲載)

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