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連載・特集

地方紙記者 ヒロシマ報道 今夏の講座参加10人 課題の「継承」にも関心

 広島市が全国のブロック紙や地方紙から若手記者を招く恒例の国内ジャーナリスト研修「ヒロシマ講座」にはこの夏、関東から九州・沖縄にかけての10紙の23~38歳の記者が集った。中国新聞社に届いた記事は独自の取材も加え、原爆と平和を各地域の視点で掘り下げている。(岩崎誠)

 ことしで16回目となる講座は7月28日から11日間。市の平和行政や被爆者対策について学び、被爆者の証言を聞いたほか、被爆体験伝承者、核廃絶署名に取り組む高校生、平和問題の研究者らから講義を受けた。本紙の記者2人もアドバイザー役として関わった。

 10人が執筆した記事は計56本。まず関心を寄せたのが成立した核兵器禁止条約であり、それぞれの地元とヒロシマのつながりだ。

 平和記念式典に参列した各県遺族代表に加え、被爆地で暮らす地元出身者に光を当てた記者が多かった。例えば栃木県の下野新聞は「ヒロシマに生きる―被爆地の本県関係者」と題した連載で、栃木出身で平和をテーマに創作する広島市の版画家らを取り上げた。

 喫緊の課題の「継承」がテーマの連載を2社が手掛けたのも目を引く。新潟日報は広島の繁華街で続く被爆証言会に関わる新潟出身の女性の姿などを紹介。熊本日日新聞は伝承者の取り組みや、8・6登校日問題も含めて曲がり角を迎えた平和教育の今を追った。

 講師を務めた比治山大の森川敦子准教授は、市教委で携わった平和教材づくりなど平和教育について記者たちに伝え、記事にも生かされた。「被爆地以外では分かりにくい平和教育のイメージを認識してもらった」と語る。

 もう一つの被爆地を意識した記事もある。西日本新聞(福岡市)は広島、長崎の被爆3世が連携して記憶を語り継ぐ営みを報じた。中日新聞(名古屋市)は衰弱する被爆樹木を守る両被爆地の動きをまとめた。

 沖縄タイムスの記者は原爆の日を前にした国際シンポジウムを取材し、沖縄戦と基地問題についての英国の研究者の講演の模様を伝えた。被爆地のありようを考える上で、こうした広い視座も大きな意味を持つ。

 市は研修プログラムを用意するほか、参加者の宿泊費を負担する。ヒロシマの思いを広く発信する役割を果たしているとして来年からも継続する予定だ。

講座参加者と主な記事(東から)

下野新聞 佐野恵記者
 シリーズ「とちぎ平和を考える ヒロシマから」
新潟日報 今井かおり記者
 連載「ヒロシマへ思いつなぐ」
静岡新聞 大沼雄大記者
 特集「原爆の悲劇 敵味方ない 森重昭さん」
中日新聞 坪井千隼記者
 「帰れぬ遺骨今も7万柱」(原爆供養塔)
 「枯らすな被爆の記憶」(被爆樹木)
神戸新聞 長谷部崇記者
 「広島原爆死、今も把握難航 神戸空襲でも課題」
 「折り鶴再生 祈りつなぐ」
山陽新聞 高松方子記者
 「ルポ 8・6のヒロシマ」
愛媛新聞 河端渉記者
 「広島追悼画10年かけ完結 画家MAYAさん」
西日本新聞 久知邦記者
 「被爆の記憶次世代へ 長崎、広島3世が連携」
 「核禁止条約大きな一歩 元市長平岡さん」
熊本日日新聞 酒森希記者
 連載「被爆の継承」
 「原爆ドーム 守らねば」
沖縄タイムス 比嘉桃乃記者
 「原爆と沖縄戦、正しく伝えたい 広島のガイド」
 「沖縄尚学高3人、広島の生徒と署名活動」

(2017年9月18日朝刊掲載)

 「ヒロシマ講座」参加者の記事の一部は、各新聞社の協力で読むことができるようにしました。順次、追加していきます。

神戸新聞

「核兵器禁止条約加盟を 広島で署名活動 神戸の生徒も合流へ」(8月3日朝刊)
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010429121.shtml

「被爆電車、広島の女性惨状証言 84歳、体力続く限り」(8月4日夕刊)
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010433754.shtml

「亡き妻へ『よく生きたね』 宝塚の下桶さん初出席(8月7日付朝刊)
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010440014.shtml

「広島原爆死 、今も把握難航 5万人不明」(8月5日付朝刊)
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010436470.shtml

「折り鶴再生 祈りつなぐ 年10万トン超」(8月6日朝刊)
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201708/0010438610.shtml

西日本新聞

「友の意志継ぐシンガー HIPPYさん」(8月4日夕刊)
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/348384/

熊本日日新聞

「被爆の父に不戦誓う 合志市の平尾さん、平和記念式典参列」(8月7日朝刊)
http://kumanichi.com/news/local/main/20170807004.xhtml

沖縄タイムス

「安保の負担、全国で」グレン・フック氏が強調 広島で国際シンポジウム」(8月3日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/122587

「原爆と沖縄戦、正しく伝えたい 広島のガイド・村上さん」(8月5日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/123569

「核廃絶へ私たちも 沖尚高3人、広島の生徒と署名活動」(8月6日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/124690

「悲惨な原爆語り継ぐ 沖縄から72年ぶり広島訪問、式典に参列」(8月7日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/124101

「核のない世界の実現 次世代が誓う 石垣の中学生が朗読、北谷高生は灯籠流し」(8月7日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/124902

「広島に平和のオブジェ 浦添出身嘉陽さんら制作」(8月8日朝刊)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/125406

下野新聞

「とちぎ平和を考える ヒロシマから 岡田さん、癒えぬ苦しみ」」(7月30日朝刊)

「とちぎ 平和を考える ヒロシマから  被爆体験伝承者が思い」(7月31日朝刊)

「とちぎ 平和を考える ヒロシマから 本県中学生、広島入り」(8月6日朝刊)

「とちぎ 平和を考える ヒロシマから 本県中学生も静かな決意」(8月7日朝刊)

「ヒロシマに生きるー被爆地の本県関係者(上)」(8月13日朝刊)

「ヒロシマに生きるー被爆地の本県関係者(中)」(8月14日朝刊)

「ヒロシマに生きる―被爆地の本県関係者(下)」(8月15日朝刊)

静岡新聞

「磯谷さん遺志 被爆2世結ぶ」(8月6日朝刊)

「本県遺族代表広島慰霊」(8月7日朝刊)

「NEWS交差点 原爆の悲劇 敵味方ない 被爆死米兵を独自調査」(8月15日朝刊)

愛媛新聞

「広島・バーでの被爆証言会 遺志継ぎ再スタート」(8月6日朝刊)

「広島原爆の日 平和へ 感謝と誓い 県遺族代表」(8月7日朝刊)

「広島追悼画 10年かけ完結 画家MAYAさん(今治出身)」(8月13日朝刊)

「広島の大西さん(松前出身)動画制作 原爆孤児」(9月10日朝刊)

「広島原爆 語り継ぐ 元県在住被爆者㊤ 惨禍後の子ども時代」(9月18日朝刊)

「広島原爆 語り継ぐ 元県在住被爆者㊦ 他者の体験伝承活動」(9月19日朝刊)

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