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連載・特集

[ヒロシマは問う 北朝鮮核開発] 広島県朝鮮人被爆者協議会理事長 金鎮湖さん

戦争回避 対話しかない

  ―北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返す現状をどう見ていますか。
 核戦争の可能性が高まっているのは事実で、非常に心配だ。一人の被爆者として複雑な思いもある。ただ、本国(北朝鮮)は一貫して戦争を望んではいない。ここに至ってしまった要因は米国の対朝政策にある。

 歴代の米政権は、本国を敵視する政策を続けてきた。本国は朝鮮戦争の休戦協定に代わる平和協定の締結に応じるよう、米国に求めている。ただ明確な返答はなく、米韓軍事演習という挑発行為を重ねてきた。その間、米国はイラク戦争などをはじめ、相いれない国には武力を行使した。自衛策を取るのは当然だ。

  ―国際社会は北朝鮮に対する経済制裁を強める流れにあります。
 解決にはならない。米政権は故金正日(キム・ジョンイル)総書記の時代から常に経済的、軍事的な圧力をかけている。ところが、本国は「参った」となるどころか、軍事優先の「先軍政治」を推し進め、逆に力を付けた。圧力をかけるやり方ではさらにエスカレートすることに早く気付くべきだ。戦争を回避するには対話しかない。

  ―対話実現の糸口は。
 本国は常に扉を開いている状態だと思う。トランプ米大統領の判断次第だ。本国の核武装の要因を「中国やロシアが援助してきたから」と第三国に責任転嫁するのはやめるべきだ。圧力強化を訴える日本政府も対話の道を探ってほしい。

  ―北朝鮮の国民は現状をどう捉えているのでしょうか。
 現地を訪れた知人たちに聞くと、人民はいたって冷静に生活しているようだ。日本国内では、核実験の成功で本国が臨戦態勢にあるかのように報じられているが、それは違う。自国の発展を祝うのはある意味で普通のことで、そういう教育も受けている。日本のメディア、国民も冷静になってほしい。

  ―問題解決に向け、被爆地からどう声を上げていきますか。
 私たち被爆者は核兵器を絶対悪だと考えている。朝鮮半島の非核化はもちろん重要だが、あくまで世界中にある約1万5千発全てをなくすために力を尽くしたい。国際署名運動などを通じ、廃絶という共通のゴールに向けて他の被爆者団体とより連携を強めたい。(聞き手は長久豪佑)

キム・ジノ
 1946年、現在の広島市安佐北区生まれ。胎内被爆者。2012年9月から現職。98年6月~10年6月には在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)広島県本部委員長を務めた。現在は同県本部顧問。

(2017年9月20日朝刊掲載)

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