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社説・コラム

天風録 『存亡の機』

 「ロケットマン」「老いぼれ」。太平洋を挟んだ二つの国の指導者がののしり合う。口汚さたるや日に日に増す一方。耳を覆いたくなる。幼稚園児のけんか―。あきれた別の大国の外相がそう評していたが、的を射た表現だろう▲核兵器をちらつかせての舌戦である。本当の戦争に発展したら、人類の「存亡の機」となりかねぬ。さてこの言い方が本来の表現だが「存亡の危機」と言う人が大半を占めるそうだ。国語に関する世論調査で分かった▲ただ文化庁によると、時代とともに変わるのが言葉だから誤用とも言えないという。なるほど、30年ほど前に漫画から広まったらしい表現「目が点になる」は、今や半数近くが使うと答えた。生きにくい世なのか「心が折れる」も浸透してきた▲世代で使う言葉は多少違えど、コミュニケーション能力は大事だ―。9割以上がそう感じていることも調査で明らかに。意見や考え方の違う相手には「柔軟な態度」で臨み「事を荒立てず収めたい」傾向がうかがえる▲日本人らしいとも、トラブルの多い現代社会を映すとも取れるだろうか。とはいえ難題に当たる際の心得の一つに違いない。海の向こうの「園児」は教わるといい。

(2017年9月24日朝刊掲載)

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