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呉への思い込め「この世界」秘話 原作者こうのさん対談

「普通のまちの戦災」建物保存も提案

 アニメ映画「この世界の片隅に」の原作者こうの史代さんの特別対談が22日夜、呉市内のホテルであった。創作の秘話や呉の魅力アップについての提案に、ファンたち約300人が聞き入った。(見田崇志)

 主催した広島経済同友会呉支部の武田保介副支部長が聞き役を務めた。こうのさんは、母の実家があった呉市で18~20歳の2年間を過ごした。呉市を原作の舞台に選んだ理由について、こうのさんは「戦艦大和の古里でみんな興味を持ってくれるし、大事にしたい方言もきちんと書ける」と説明した。

 前作の「夕凪(ゆうなぎ)の街 桜の国」では広島原爆を取り上げた。「この世界―」は「普通のまちの戦災も描きたいと思った。何回もの空襲で、機銃掃射、焼夷(しょうい)弾などさまざまな攻撃にさらされたことを描き残したかった」と話した。

 主人公すずを生み出した裏話も披露。「よそから来た、ぼーっとした子。周囲が彼女に説明する形で話を進めやすかった。戦争を知らない人が、すずと一緒になって世界を見られる」と明かした。さらに、すずやリンたち登場人物名は元素の周期表を見て決めたことも紹介した。

 映画化については「戦争の記録は白黒写真しかなくて、人の記憶もあいまいな中、色の再現の難しさを感じていた。映画はそれをやり遂げていて驚いた」と称賛した。

 映画では「下士官兵集会所」として登場し、市が在り方を検討する呉市幸町の青山クラブについては「近くに美術館や入船山記念館があり、寄りたいと思う場所。レストランなどにして残してほしい」と提案した。

 対談後、大阪市北区の会社員堀毛雄一さん(38)は「『この世にこの作品がなくてはいけないという気持ちで描く』という話を聞いて、だから良い作品になったのだと納得した」と話していた。

(2017年9月24日朝刊掲載)

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