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連載・特集

[つなぐ] 広島女学院大留学生 アイスダ・アジダリさん=イラン出身

ヒロシマ学ぶ機会 提案

 この8月、イランの小学生たちが作った色とりどりの千羽鶴が、平和記念公園(広島市中区)の原爆の子の像にささげられた。同国出身の広島女学院大4年アイスダ・アジダリさん(23)=広島市南区=が首都テヘランの小学校に呼び掛け、現地の子どもたちが「オリガミ」と格闘しながら作り上げた千羽鶴だ。

 ペルシャ語で「平和を育てる」という意味の平和サークル「rouyeshesolh(ルイエシュソール)」を2年前に結成した。帰省に合わせてテヘランの大学生たち6人と一緒に小学校で千羽鶴を作りながら平和と協調を学ぶワークショップを開催。写真共有アプリ「インスタグラム」で発信している。

 「イランの学校教育は勉強中心で、ボランティアや平和学習の機会がほとんどない。広島と同じように子どもたちに平和の大切さを伝えたい」。留学生活で膨らんだ思いが、母国で平和の芽を育むプロジェクトのきっかけだ。

 今の実家はイラン南西部のシラーズにあるが、幼少期は研究者の両親の仕事の都合でテヘランや地方都市で暮らした。どの街にもイラン・イラク戦争(1980~88年)の犠牲者の名前を冠した道路や広場があり、イラクのフセイン政権が使った化学兵器の後遺症に苦しむ人たちに出会った。「日常的に戦争の記憶に触れていた」と振り返る。

 初めて広島を訪れたのは2013年夏。母とともに12歳で移り住んだマレーシアでインターナショナルスクールを卒業後、国際青少年平和セミナーに参加した。原爆資料館を訪れ、被爆者の証言を直接聞いた。母国の毒ガス被害者と重ね合わせ、胸が痛んだ。

 一方で広島が気に入った。「街の規模が程よく、平和や国際問題に関係する人が多い。グローバルなキャリアを歩みたいと思う学生には最高の街だ」と確信したという。マレーシアやカナダの大学への進学も検討していたが、広島女学院大国際教養学科を選び14年春に入学した。

 日本留学中、イランは核開発問題で国際社会から批判を浴びた。米国などとの間で核合意には至ったが、トランプ政権になって見直す方針。中東の周辺国も含めて母国の今後の情勢は見通せない。

 その中で大学生活も残り半年を切り、時間があれば平和行事や国際シンポジウムに顔を出す。将来の夢は、国連職員や外交官になることだ。最近、国連訓練調査研究所(ユニタール)広島事務所でインターンシップも始めた。

 「広島で世界中の若者が集まる会議や、教育プログラムが増えれば、世界はもっとよくなるのに」と感じている。若い世代がヒロシマで学び、感じたことは、生涯きっと忘れないと思うからだ。

 小さな平和の営みはこれからも続けたいと思う。「ヒロシマに留学した私の役割はイランの若者をグローバルシティズン(地球市民)に育てること」と信じる。(桑島美帆)

(2017年9月25日朝刊掲載)

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