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検証 湯崎広島県政2期目 平和推進 提言に力 市と役割分担

 核兵器廃絶への道筋を議論する、広島県主催の国際会議「ひろしまラウンドテーブル」は、今年で5回目となった。湯崎英彦知事をはじめ、米国や中国など7カ国の専門家ら16人が8月1、2の両日、広島市南区で討議。核兵器保有国や「核の傘」に頼る国の政府関係者が広島に集い、廃絶への具体策を議論することなどを提言した。「有意義な議論ができた。国際社会を動かす大きな力になると期待している」。終了後の記者会見で湯崎知事は強調した。

 県は今、北朝鮮情勢や国連での核兵器禁止条約の採択など、国際社会の動きを意識した「提言型」の平和施策を推し進めている。研究機能の強化に向け、5月にはスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)など欧州の3研究機関と連携協定を締結。各国の核軍縮などの取り組みを毎年採点する「ひろしまレポート」も、世界の研究者や政府関係者をターゲットにして、英語でも公表する。

 「提言型」を強める理由の一つが、被爆の実態を伝えるため「迎える平和」を掲げる広島市との役割分担だ。今月13日に県庁であった県市トップ会談で、松井一実市長は、県の動きについて「広島が平和の拠点になるよう研究や発信をしてくれている。(分担は)ぴったりはまっている」と評価した。

拠点設置目指す

 こうした県の方向性は、湯崎知事が1期目の2011年度にまとめた「国際平和拠点ひろしま構想」に沿っている。同構想は「核軍縮の要求を実際の政策に結びつける拠点を広島に設けたい」などと明記。研究や人材育成、世界の非政府組織(NGO)のネットワーク化などを担う「センター」の設置を目指す。

 ただ、センターを具体化するための道筋は今も描けていない。広島市が市立大広島平和研究所(安佐南区)を置き、広島大にも平和科学研究センター(中区)があるのに対し、県は研究機関を持たない。

 連携協定を結んだSIPRIとは、8月のラウンドテーブルで共同研究の成果発表を目指していた。しかし、県側の態勢が整わず、先送りとなった。県平和推進プロジェクト・チームは「共同研究で、県側がどこまでの役割を担うのかを調整している」という。

県民に浸透せず

 県が、県民千人に施策の認知度を定期的に尋ねるインターネット調査では、ひろしま構想関連の取り組みの認知度は今年2月時点で49・0%。前年同期の61・8%から12・8ポイント落ち込んでおり、センター具体化の動きが見えない中、県民への浸透も進んでいない現状が浮かぶ。

 平和行政に詳しい宇吹暁・広島女学院大元教授は、県の取り組みを「SIPRIなど外部の権威に頼りすぎではないか」とみる。禁止条約などによる核兵器廃絶への関心の高まりを踏まえ、改めて県全体の原爆被害の解明や発信に重点を置くべきだと提言する。国際性や専門性の看板の下に県民を置き去りにしない視点も求められている。(明知隼二)

国際平和拠点ひろしま構想
 広島県が2011年度、国内外の有識者の意見を踏まえてまとめた。被爆地広島の役割として、核兵器廃絶の具体的なプロセスへの貢献のほか、平和構築に向けた人材育成や研究の集積を掲げている。県が進める平和関連施策の基本計画と位置付けられる。

(2017年9月30日朝刊掲載)

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