×

社説・コラム

社説 ’17衆院選 原発の是非 具体策示し議論深めよ

 今回の衆院選で、原発の是非が主要な争点の一つとして浮上している。

 新党、希望の党が「原発ゼロ」を掲げ、原発の再稼働を進める自民、公明両党連立による安倍政権との対立軸を鮮明にしたからだ。日本維新の会に加え、リベラル勢力とされる立憲民主、共産、社民の野党3党も脱原発を訴える構えだ。

 原発をこのまま利用し続けるのか、それともやめるのか―。各党とも原発の再稼働や中長期的な位置付けなどを含めた具体的なエネルギー政策を分かりやすく示し、選挙戦を通じて議論を深めなければならない。

 東京電力福島第1原発の事故から6年7カ月たつ。今も5万人以上の住民が避難を続け、廃炉のめども立っていない。被害の深刻さを考えれば、さまざまな世論調査で、原発再稼働に否定的な意見が依然として多数を占めているのは当然だろう。

 にもかかわらず、安倍政権は「原発回帰」を積極的に進めている。安倍晋三首相は政権復帰直後に「原子力規制委員会のもとで安全が確認された原発は再稼働する」と宣言、これまで5基の原発が再稼働した。

 今回の選挙公約でも、自民党は原発を基幹(ベースロード)電源と位置付けて活用するとのスタンスを変えていない。一方で「できる限り原発依存度を減らす」ともうたっている。

 安倍政権は、3年前に策定したエネルギー基本計画で、2030年に必要な電力の約2割を原発でまかなう方針を示している。実現するには30基ほど稼働する必要がある。どうやって原発依存を減らすというのか。

 このまま原発の再稼働を後押しして、使い続けるというのであれば、国民の不安や疑問と正面から向き合い、理解を求める姿勢が欠かせない。使用済み核燃料の最終処分方法や、核燃料サイクル政策などに自民党の公約は触れていない。議論を避けることなく、選挙戦では丁寧に説明するべきだ。

 一方、希望の党は「30年までに原発ゼロを実現する具体的な工程を検討している」との考えを示す。近く明らかにする公約に盛り込む。ただ、小池百合子代表は、安全が確認された原発の再稼働には「異論を唱えない」とも発言している。

 既存原発の再稼働を容認しながら原発ゼロを目指すのは困難だろう。再生可能エネルギーの普及を加速させる考えのようだが、発電コストや利用者の負担が増す可能性もある。課題は多く、本気度を見極めたい。

 他の野党も原発ゼロを主張するが、電力の安定供給をはじめ脱原発への責任ある道筋を示す必要がある。

 世界に目を転じれば、地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定の発効を受け、多くの国は風力や太陽光など再生可能エネルギーに注力し、脱炭素化が加速している。

 逆に原発は、福島の事故を受けて安全対策費など建設コストが高騰し、事故が起きれば膨大な賠償費も必要になる。米国やフランスを含めて原発利用を見直す動きが広がる。日本は、世界の潮流から取り残されつつあるといえよう。

 国のエネルギー政策には幅広い国民の理解が欠かせない。有権者が進路を選択できるよう、活発な議論を期待したい。

(2017年10月6日朝刊掲載)

年別アーカイブ