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条約未参加 政府に圧力 ICAN 平和賞 「核の傘」転換促す

 核兵器禁止条約制定を後押しした核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞が決まり、条約に参加していない日本政府の関係者たちに波紋が広がった。受賞を機に政策転換を求める声が高まり、政府は対応を迫られるとの見方も出ている。(田中美千子、武内宏介)

 日本は核なき世界の実現を掲げる一方、自国の安全保障を米国の「核の傘」に頼り、条約の制定交渉に参加しなかった。外務省担当者は「平和賞を授与する団体の考え方は考え方。核兵器廃絶の目標は共有するが、アプローチは異なる」とする。「(廃絶には)核兵器保有国と非保有国による協力が必要だ。今後も現実的、実践的な取り組みをリードしていく」とし、双方の信頼関係構築に努める従来の考えを繰り返した。

 一方、同省関係者は「北朝鮮が受賞決定を重んじたりはせず、日本を取り巻く安全保障環境は変わらない。政策転換にはつながらない」としながらも、「反核の世論が高まり、日本政府は対応を考えることにはなるだろう」と受け止める。与党関係者も「政府にとって受賞のインパクトはすごい。国際社会に理解されず、条約を巡る対応を検討する状況に追い込まれた」との見方を示す。

 被爆者団体などからは、条約への署名を求める声が強まっている。日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(85)は「政府は衝撃を受けているはずだ。条約発効後、日本は辱めを受けることにもなる。条約署名を真剣に考えるべきだ」と訴える。

 長崎大核兵器廃絶研究センター(長崎市)の中村桂子准教授は「核兵器で安全は守れない、との被爆地の訴えが国際社会のお墨付きを得た。政府は禁止条約に反対する姿勢だけでなく、核抑止力に頼る政策も問われる」と指摘している。

(2017年10月7日朝刊掲載)

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