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被爆前後VR 米で公開へ 福山工業高再現 爆心地の「あの日」

「保有国 恐ろしさ実感を」

 福山工業高(福山市)の計算技術研究部が制作している被爆前後の広島の爆心地付近を再現するバーチャルリアリティー(VR)作品が、25、26日に米ニューヨーク州のシラキュース大で公開される。言語を超え、映像と音で原爆の恐怖を訴えかけるVR。生徒は「核保有国の人が核の恐ろしさを実感し、考えるきっかけになれば」と期待する。(高本友子)

 VRは約5分間で、爆心地から半径300メートルがエリア。ゴーグル型の装置を着けるとまず被爆前の映像が映し出される。木が茂り、商店が並ぶまちをコントローラーを使って「歩く」体験もできる。目の前が光り爆音が鳴ると、黒煙や炎が立ちこめる映像に変わり、足元には遺体が横たわる。

 同大などで開く原爆展の一環で、被爆者による講演もある。作品は12月まで同大に貸し出す。同部の平田翼部長(18)は「国が所持する核兵器が一発でも落ちればどうなるか、知ってほしい」と力を込める。

 同大教授が来日中、同校のVRを知り、米国公開を提案した。ただ、事前にVRを見た教授からは「ショックな映像。被爆前だけにならないか」との感想が届いた。同部の長谷川勝志顧問は「全て失われた恐ろしさを知るには、被爆前後での体験に意味がある」と伝えたという。

 公開した反響などを後に聞く予定。2年の中川勇飛さん(17)は「活動の広がりを感じた。一人でも多くの人に体験してもらいたい」と話した。

バーチャルリアリティー(VR)技術
 コンピューターで作り出した映像や音で、現実の疑似体験ができる技術。ゴーグル型のディスプレーなどを使い、360度の仮想空間を表現。視覚、聴覚などを刺激する。

(2017年10月25日朝刊掲載)

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