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創意重ね平和発信 絵や即興詩 新たな手法 元米国防長官 ネット中継で反核議論

 核兵器禁止条約が制定されたことし、新たなスタイルで平和を考える営みが緒に就いた。29日、「ヒロシマ・ナガサキ ZERO PROJECT」の第1回平和イベントが被爆地広島で開かれた。核や環境について若者に問うた討論、さまざまな手法のアートのワークショップ…。200人以上が参加し、熱気ある発信が終日続いた。(桑島美帆、金崎由美)

 主な舞台になったのは広島市中区小町の寺院、妙慶院。プロジェクトを企画した米NPO法人「1Future」代表のキャノン・ハーシーさん(40)は自ら手掛けるシルクスクリーンのアートを生かし、オリジナルTシャツを作った。原爆ドームや被爆樹木の図柄を無地のTシャツに刷ると、参加した若者たちは喜んで持ち帰った。

 詩作にも取り組むミュージシャン佐野元春さん(61)は詩で思いを表現する方法を、広島県内外から集まった10~20歳代の12人に伝えた。「よりよい明日」などの言葉に触発されたことを即興で詩にまとめ、それぞれが朗読した。佐野さんは「これから先、深い悲しみに陥った時も決して屈さず言葉で乗り越えてほしい」と呼び掛けた。

 アートに先立つ議論では「核兵器のない世界」の必要性を説く元米国防長官ウィリアム・ペリーさん(90)が米国からのインターネット中継で参加した。米ソ核軍拡競争の恐怖を肌で知る当事者として「自分の孫やひ孫の世代に対して核兵器が使われることが決してないよう全力を尽くすことを自らに誓った」と強調した。 若者たちの輪に加わっていた被爆者の田中稔子さん(79)=東区=も「日米両国で核兵器の危険性を知らない人が増えている。まずは自分で事実を学ぶこと」というペリーさんの呼び掛けにうなずいていた。

 討論やワークショップには中国新聞ジュニアライターの15人も加わった。ハーシーさんは「幅広い世代やコミュニティーで議論を深めた。広島から新しい方法を世界へ発信できた」と手応えを感じていた。

(2017年10月30日朝刊掲載)

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