社説・コラム

緑地帯 チャップリンと核 森弘太 <4>

 チャップリンが「ニューヨークの王様」を製作した1950年代、米国は太平洋ビキニ環礁での水爆実験による第五福竜丸事件(54年)をはじめ、核兵器に絡む数々の被曝(ひばく)事故、放射能汚染を引き起こした。

 しかし、その後も核兵器の廃絶へ向かうことはなく、小型化や精密化で使いやすい核へ改修する「核の近代化」に突き進んだ。冷戦終結を経た今も、言葉はともかく実態として、その姿勢に変わるところはない。

 核の平和利用でも、この作品に表されているチャップリンの期待を裏切った。被曝事故や放射能汚染の原因は、核兵器から原子力発電へも拡大した。スリーマイルアイルランド原発の炉心溶融事故(79年)は決定的だが、核関連工場からの放射能漏れなどが繰り返されてきた。

 「ニューヨークの王様」は、街の描写では当時のロックン・ロールや西部劇、派手なパーティーを、家庭ではテレビCMの影響力を米国を象徴する現象として表現し、人物では、マッカーシズムで悲境に追い込まれる少年を自身の体験と重ねながら描く。

 核の平和利用計画の売り込みを果たせなかった主人公の王(チャップリン)は、ニューヨークを去る機内でどのような思いに浸ったろうか。この国の金融資本は、核を金もうけの手段として最大限に活用し続けるに違いない、との思いを深めたのではなかろうか。

 その視線は「核文明」の破滅を見据え、チェルノブイリや福島の原発事故をも予告するかのごとくである。(映画監督=尾道市)

(2017年11月14日朝刊掲載)
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