×

社説・コラム

キーパーソンがゆく 西区被爆フィールドワークの会(広島市西区) 小西正則代表

身近な「歴史の証人」巡る

証言集め冊子作りも

 広島市西区で2015年から被爆建物や被爆樹木などを巡るフィールドワークを年数回、企画している。依頼に応じて開き、親子連れや教職員OBたちが参加する。「身近に残る『歴史の証人』に触れ、被爆の実態を知ってほしい」と願う。

 爆風で一部が欠けた蓮照寺本堂の木製扉や広瀬神社のこま犬、天満小近くの被爆クスノキ…。市が発行した被爆建物の写真集や住民の証言から集めた78カ所を6コースに分け、メンバー3~5人が案内役となって歩く。今年はこれまでに6回開き、計約50人が参加した。

 大学入学を機に、18歳で東広島市から西区に移り住んだ。フィールドワークの開催を決めたのは、被爆70年を前にした14年。老朽化などで被爆建物が取り壊され、被爆樹木も減っていると知り、危機感を抱いた。「存在した事実を人の記憶や記録に残さなければ」と思い立った。

 地域の住民に呼び掛けて会を発足させた後、被爆建物や樹木を知る人を訪ねて証言を集め、冊子を作った。フィールドワークではそれらの証言を基に、被爆前後の歴史や被爆当時の状況も伝える。「被爆の延長線上に自分たちが生きていることを知ってほしい」との思いからだ。

 16年8月には市登録の被爆建物だった区内の寺の庫裏と鐘楼が老朽化のため取り壊された。「今後も被爆建物の消失は避けられない。活動の継続が欠かせない」と誓いを新たにしている。(小笠原芳)

こにし・まさのり
 1939年、東広島市生まれ。広島大卒業後、高校教諭を経て市学童保育連絡協議会の事務局長を務めた。昨年10月には、被爆し、戦後伐採された西区福島町のクスノキを後世に伝えるため、「地域探訪・くすのきの会」を結成した。

(2017年11月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ