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「まさか」被爆地に落胆 原爆症全面敗訴で原告ら

 「被爆地でまさかこんな判決が出るとは」。広島地裁で原爆症の認定などを求める被爆者24人の訴えを退ける判決が言い渡された28日、原告や弁護団から怒りの声が上がった。全国で係争中の同種訴訟で、司法による救済が進む中での全面敗訴に落胆が広がった。

 「極めて残念な結果。怒りを通り越して情けなくなる」。判決後の報告集会。集まった原告15人や支援者を前に、弁護団の池上忍弁護士は国の主張を全面的に認めた判決に憤った。弁護団長の佐々木猛也弁護士も「爆心地からの距離などにとらわれず、被爆者を救済してきた司法の流れに真っ向から逆らう判決」と語気を強めた。

 2014年12月に85歳で亡くなった母親の田部恂子さんの訴訟を引き継いだ次男の自営業田部昭夫さん(61)=広島市南区=は「母はきっと墓の中で泣いている」と無念さをにじませた。恂子さんは16歳の時、爆心地から約1・2キロの広島女学院の校舎で被爆。甲状腺機能低下症などを発症し、入退院を繰り返した。昭夫さんは「こんな判決が出るとは…。母に報告する言葉が思い浮かばない」と唇を震わせた。

 甲状腺機能低下症などを患う南石淑江さん(73)=安芸区=は「被爆は距離とか放射線量という数字で表せない。納得いかない」。

 原告の多くは法廷で、あの日の記憶をたどり、発熱や脱毛などの急性症状、その後の疾病の発症などつらい体験を語った。「焼け野原をさまよった被爆者の苦しみを理解していない」。甲状腺機能低下症の本迫冨貴子さん(82)=福山市=は、被爆の翌日から1週間、比治山国民学校で亡くなった人を焼くのを手伝った。佐々木シズエさん(87)=廿日市市=は「認められると信じて頑張ってきたのに…。もう戦う気力がない」と肩を落とした。

 原告最年長の吉田寅夫さん(91)=広島市中区=は、入所する原爆養護ホームに安倍晋三首相が訪問した際、原爆症の認定を進めるよう直接求めた。「被爆者のことは眼中にないのだろうか。もう国にも裁判所にも期待することはない」と地裁を後にした。

(2017年11月29日朝刊掲載)

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