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24年経て混迷打開 広島駅Bブロック再開発本格始動

住民、期待と寂しさ交錯

 広島市南区のJR広島駅南口Bブロック市街地再開発事業は25日、大きな節目を迎えた。市が今の土地所有権などを再開発ビル内の権利などに置き換える計画を認可。都市計画決定から24年を経てようやく再開発が動きだす。一帯は来月にも建物の取り壊しが始まる。にぎわい復活への期待、老舗との別れ…。さまざまな思いが交錯する中、被爆建物の活用という課題も残る。(藤村潤平)

 「町がやっと生まれ変わる」。猿猴川沿いの理容店の3代目、秋信邦之さん(90)は期待を寄せた。エリア内に店を構えた戦前から、戦後の闇市のにぎわい、再開発の混迷を見守ってきた。「かつての人の往来を取り戻してほしい」と願う。

 1・4ヘクタールのエリア内には、約50棟の建物がひしめく。Bブロック市街地再開発組合によると、うち2割は空きビルだ。さび付いたシャッター、崩れ落ちそうな軒先のテント…。1階のシャッターを下ろし、上階を住居にする建物も多いという。

 築55年のレトロな外観が目を引く3階建ての純喫茶パールは来月閉店し、取り壊される。佐伯区出身の故新藤兼人監督の映画ロケにも使われた。社長の阿部太一さん(71)は「寂しさはあるが、新しいビルで再出発したい」。建設される52階建ての高層ビル1階に入居予定で完成までの3年余りは休業する。

 エリアには被爆建物の旧住友銀行東松原支店もある。爆心地から1・9キロ。湾曲した鉄扉が爆風の威力を今に伝える。再開発組合は一部の保存活用を検討するが取り壊しが迫る中、結論は出ていない。市平和推進課の石田芳文被爆体験継承担当課長は「被爆の実態を伝える建物。どういう残し方ができるか協議したい」と話す。

(2012年10月26日朝刊掲載)

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