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被爆地からも称賛 ICAN平和賞授賞式 「勇気づけられた」

 非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))へのノーベル平和賞授賞式から一夜明けた11日、広島市でも喜びの声が広がった。「核兵器禁止条約を核兵器の終わりの始まりにしよう」と訴えた、南区出身の被爆者サーロー節子さん(85)=カナダ・トロント市=の受賞演説に、市民は核廃絶などへの決意を高めた。(奥田美奈子、栾暁雨、辻本夕貴)

 中区の原爆資料館にはこの日も、原爆の惨状を学ぼうと日本各地や世界から観光客たちが大勢訪れた。群馬県榛東村のパート加藤英子さん(52)は、核兵器廃絶を目指す市民運動の一つとしてICANを紹介する情報検索端末を閲覧。「市民主体の運動に弾みがつく」と喜んだ。

 サーローさんは演説で、核の傘の下にいる国を核保有国の共犯者と糾弾した。香港出身でカナダ在住の梁偉さん(38)は「日本は唯一の被爆国として、核の傘の下に入り続けるべきではない」と指摘した。

 演説は、平和活動に携わる市民の心も揺さぶった。同館の解説ボランティアの上別府静子さん(73)=安佐北区=は「力強い演説に勇気づけられた。核廃絶の声を被爆地から上げ続けたい」と語った。

 サーローさんの母校の広島女学院大(東区)の学生たちは、折り鶴を折る動画を作った。1年折本鞠香さん(19)=東区=は「被爆者の肉声を聞ける最後の世代として、被爆体験をどう伝えていくか考えたい」。学長の湊晶子さん(85)は「国や民族を超えて行動するICANの姿から若者に学んでほしい」と願った。

 授賞式は、核保有国が欠席する異例の事態となった。被爆2世として被爆体験の継承を目指す市民グループ代表の竹口博子さん(64)=西区=は「核兵器廃絶が容易ではない現実を示した。ただ今回の受賞で、市民レベルの活動も世界に声を届けられると分かったことは、大きな光だ」と受け止めた。

(2017年12月12日朝刊掲載)

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