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広島の高校生 被爆体験伝えたい 継承テーマ 放送部制作

 11月18日に開かれる広島県高校総合文化祭(放送文化部門)に向け、五日市高(広島市佐伯区)と国泰寺高(中区)の放送部が、被爆体験の「継承」をテーマにした作品づくりを進めている。いずれも、25枚以内の写真とインタビュー、ナレーションの音声で表現するオーディオピクチャー部門に出品する予定。継承活動に取り組む人や被爆者へのインタビューなどを通じ、高校生の視点で自分たちにできることや課題を、5分間という限られた時間で表現しようとしている。(二井理江)

五日市

「一番電車」関係者を取材

 原爆投下の3日後に一部路線で運行を再開した路面電車。この時乗務していたのは、10代の女学生たちだった。

 五日市高放送部の4人は、被爆して出血した頭に包帯を巻いたまま運転した児玉豊子さん(84)=三次市=や、被爆前夜に運転していた、いとこの増野幸子さん(82)=広島市中区=にインタビューした。児玉さんの体験を漫画にして、インターネットで公開している、児玉さんの孫娘にもメールで取材した。

 ほかにも、平和記念公園(中区)にも出向き、若い人たちに「一番電車」がどれだけ知られているか調べた。作品では、被爆体験と若者の意識、漫画による継承を踏まえ、自分たちにできることを模索する。

 増野さんに取材した1年田中佑季さん(16)は「原爆は怖い、というだけではなく、この事実を次につないでいかなければ、と考えることで、意識が変わることを伝えたい」と話す。そんなメッセージを作品に込める。

国泰寺

語り部バー 触発受ける

 毎月6日に被爆者の体験を聴く会を開いているバーが中区にある。国泰寺高放送部の5人は、「バー」と「被爆証言」という、一見ミスマッチな組み合わせに注目。聴く会を開いているバーの経営者で33歳の冨恵洋次郎さんを、これまでに2回取材して、思いを聞いた。

 子どものころ、平和学習に全く関心がなかったこと。バーに来た観光客に原爆について聞かれても答えられず、自ら学び始めたこと。店が火事に見舞われたものの、別の場所で会を継続したこと…。

 「被爆しても、広島を再建しようと頑張った人の話ってすごい。自分も頑張ろうと思うんだ」。そんな冨恵さんの言葉が、部員の心に残った。

 取材した2年大下愛海(なるみ)さん(16)は「原爆って遠いものと思っていたけど、若い冨恵さんに話を聞いて、私たちもちゃんと伝えないといけない、と思えた」と話す。作品にも反映させるつもりだ。

(2012年10月29日朝刊掲載)

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