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伊方3号機差し止め 高裁段階で初判断 阿蘇山のリスク指摘 広島高裁

 昨年8月に再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市と松山市の住民4人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁の野々上友之裁判長は13日、運転を差し止める決定をした。火山の影響による危険性について、新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理と指摘。2011年の東日本大震災後に再稼働した原発を止める初の高裁判断で、国や電力会社の原発再稼働方針に影響を与える可能性がある。(有岡英俊)

 広島地裁では差し止めを求める民事訴訟も係争中。高裁は訴訟で異なる判断が出る可能性も踏まえ、運転停止期間を18年9月30日までとした。同3号機は定期検査のため運転停止中。四電は18年1月22日の運転再開を予定するが、その後も当面運転できない見通しとなった。四電は「到底承服できない」として同高裁に決定取り消しを求める保全異議と一時的に効力を止める執行停止を申し立てる方針。

 野々上裁判長は、熊本県の阿蘇カルデラ(伊方原発から約130キロ)に着目。原子力規制委員会が安全性を審査する内規として策定した火山ガイドを基に、四電が実施した伊方原発周辺の地質調査やシミュレーションを検討し、「約9万年前に発生した阿蘇カルデラの噴火で火砕流が原発敷地内に到達した可能性が小さいとはいえない」として、四電の想定は過少だと判断した。四電による噴火した際の火山灰の降下量なども過少と評価。「原発の立地に適さない」とした。

 一方で、東京電力福島第1原発事故後に原子力規制委が策定した新規制基準や四電が定めた基準地震動(耐震設計の基準とする地震の揺れの大きさ)は「合理的」とした。

 3月に申し立てを却下した広島地裁の決定を不服として住民が4月に即時抗告していた。伊方原発を巡っては他に山口地裁岩国支部、松山、大分の両地裁でも同種の仮処分が申請され、7月には松山地裁も申請を却下し、住民側が即時抗告している。

(2017年12月14日朝刊掲載)

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