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島根原発停止最長 住民、不安拭えぬ9ヵ月 福島・拡散予測が影

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)2号機が1月末に定期検査で停止し、9カ月が過ぎた。先に定期検査入りした1号機も含め両基とも停止した期間としては、1989年の2号機運転開始以来、最長を更新した。再稼働の前提条件となる国の安全基準公表は「来年7月まで」。稼働時期が見通せぬ中、地元住民の暮らしに福島第1原発事故が影を落とす。(樋口浩二)

 「目に見えんから」。原発から約2・5キロの同市鹿島町、主婦青山瑞枝さん(67)は放射性物質の「怖さ」をこう表す。福島の事故の後、洗濯物のシャツは表向けに干す。「肌に付かんようにね。島根原発からは漏れてないと頭では分かっとるけど」。生まれ育った地での生活にわずかな変化が生じている。

 「どこまで逃げたら安全なんかね」。近くの主婦(68)は事故を想像すると「気が気でない」。原子力規制委員会が24日に示した放射性物質の拡散予測では被曝(ひばく)エリアが原発24・2キロに及んだ。一方で「電気を不自由なく使っている。原発をなくせとは言えない」と複雑な心境を明かす。

 「不安は当然だと思う」。中電島根原子力本部渉外運営部の杉谷昭弘部長は、地元住民の心情に一定の理解を示す。一方、地元の自治会長たちを部署の10人で訪ね歩いては、津波対策や定期検査の進展具合を説く。

 その数、4~9月の半年だけで延べ3200軒。「稼働時期は国の判断次第。今は安全性向上の取り組みを説明するしかない」

 「せめて一番古い原発だけは廃炉に」(青山さん)との声も漏れる1号機。2014年3月で政府が原発の運転期限とする40年を終える。寿命が迫る。

 一方、完成間近の3号機は、9月に政府が建設続行を容認した。原発から約2・5キロ、同町古浦地区の自治会長亀城幸平さん(62)は10年11月に発足させた自主防災組織で来春、避難訓練を計画している。

 政府は30年代の原発ゼロを目指す半面「安全性が確認された原発は活用する」方針も掲げる。「確かに事故は怖いが、当分原発は残る。今はどう地域の安全を守るかを考えたい」と亀城さん。「現実的」な考えで原発との共存策を模索している。

(2012年10月29日朝刊掲載)

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