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防衛拠点化 住民に不安 地上イージス導入決定 監視レーダーも計画

 政府の地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入決定を受け、山口県内が国防の前線地帯に位置付けられる可能性が高まっている。朝鮮半島有事をにらみ、米軍と自衛隊の連携強化が進む弾道ミサイル防衛(BMD)は、県民にどのような影響が及ぶのか。米軍岩国基地を抱える岩国市や演習場周辺の住民からは戸惑いの声が聞かれた。(和多正憲、坂本顕)

 「基地の町が(北朝鮮の)ミサイル標的になる可能性は高い。迎撃システムは必要だ」。岩国市由宇町の飲食店員福本繁生さん(53)は冷静に受け止める。一方、米空母艦載機の岩国移転と合わせ「県内の軍事拠点化が進んでいるのでは」と懸念も示す。

 政府は候補地に萩市の陸上自衛隊むつみ演習場を検討する。演習場から南東約5キロの山口市阿東嘉年下で暮らす波多野光子さん(76)は、「地元で話題になっているが詳細が分からない。近いからミサイルに狙われないか心配」と漏らす。

 同じく演習場に近く日本海に面した阿武町では、6月に北朝鮮のミサイル発射を想定した県内初の避難訓練をした。自治会長の小田利春さん(66)は「ミサイル攻撃が不安だが、役場から説明はない。正式に決まれば教えてほしい」と求める。

 防衛省は「イージス・アショア」導入と合わせ、山陽小野田市への「宇宙監視レーダー」配備も計画。いずれも2023年度の運用開始を目指す。同市の高橋春雄さん(72)は「国は宇宙監視レーダーとイージス・アショア導入は無関係と説明している。信じるしかない」と話す。

 弾道ミサイルを追尾するレーダーが発する電磁波を心配する声もある。県平和委員会などは11月下旬、「人体への影響が看過できない」として、県内配備に反対する申し入れ書を県に提出した。

 この日、萩市の藤道健二市長は政府の閣議決定を受け「配備場所は何ら決定していないと承知しており、見解を述べる状況にない。県と連携を密にしながら情報収集する」とのコメントを出した。

(2017年12月20日朝刊掲載)

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