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連載・特集

2017中国地方この1年 北朝鮮対応

PAC3配備 警戒続く

 地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の発射機2基が、深緑色の口先を北朝鮮のある北西に向ける。広島県海田町の陸上自衛隊海田市駐屯地。弾道ミサイル発射に備えて8月12日に配備され、今も24時間態勢で警戒が続く。

 毎年秋に開催され、市民約1万人でにぎわう駐屯地の一般公開が、今年は中止になった。PAC3配備の影響とみられている。海田町自治会連合会の山岡崇義会長(81)は「警戒のためにはやむを得ない。政府には大事に至らないよう、外交努力を求めたい」と語る。

上空通過を予告

 北朝鮮は今年2~11月に計16回、ミサイルを発射した。8月9日には米領グアム沖に向けた発射計画を示し、島根、広島、高知各県の上空通過を予告。中国地方の緊張度が一気に高まった。9月3日には6回目の核実験を実施。2年連続の強行に、被爆者や市民は憤りや不安を強めた。

 ミサイル飛来を想定した大規模な避難訓練は6月以降、広島市や山口県阿武町、島根県隠岐の島町などで行われた。有事への備えを小中学校で確認するケースもあり、校内に響き渡る警報音に「本当に飛んできたら怖い」とおびえる子どもの姿があった。

 北朝鮮情勢を背景に、山口県内で最新の防衛施設を整備する構想も相次ぎ表面化した。政府は今月19日、地上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入を閣議決定。西日本を防護範囲とする最新鋭システムの候補地として、萩市の陸上自衛隊むつみ演習場が浮上している。

 山陽小野田市の海上自衛隊岩国基地山陽受信所跡地には「宇宙監視レーダー」を配備する計画を住民に説明した。宇宙ごみや不審な外国の人工衛星を24時間態勢で監視するという。日米がミサイルの警戒監視などに用いる人工衛星を守る狙いも透ける。

拠点化進む岩国

 米軍岩国基地(岩国市)では、在日米軍再編に伴う艦載機移転で極東最大級の軍事拠点化が進む。住民は「標的にされるのではないか」と不安を口にするが、「イージス・アショア」では、山口県や萩市への説明すらない。「地元の理解と協力を得ることが必須であり、丁寧に説明する」とする小野寺五典防衛相の言葉がむなしく響く。

 PAC3が海田市や出雲(出雲市)など中四国地方4県の駐屯地に配備されてから2日後。広島県の湯崎英彦知事や島根県の溝口善兵衛知事は首相官邸で安倍晋三首相と面会し、対応の強化を要請した。

 安倍首相は「私も、世界中の誰一人として紛争を望んでいない。あらゆる手段を使って圧力を最大限にし、北朝鮮が対話を求める状況をつくる」と繰り返す。北朝鮮の暴発を押しとどめる外交戦略とは。平和主義を掲げる日本の知恵が問われている。(永山啓一、和多正憲、小林正明)

(2017年12月23日朝刊掲載)

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