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社説・コラム

社説 政府予算案 防衛費 歯止めはどこに

 財政規律が緩んだまま、「過去最大」を6年続けて更新した。政府はきのう一般会計総額97兆7128億円に上る2018年度予算案を閣議決定した。

 急速な少子高齢化に伴い社会保障費が約33兆円に膨らむ一方で、防衛費が増強された。税収はバブル期の水準まで伸びると見込むものの、新規国債発行額は33兆6922億円と高止まりしている。政府は「聖域なき歳出抑制」を掲げながら、財政健全化に対する危機感が乏しいのではないか。

 とりわけ気になるのが防衛費である。歯止めなく増え続け、5兆1911億円に上った。こちらも「6年連続過去最大」の枕ことばが付く。

 安倍晋三首相が「国難」と呼ぶ北朝鮮情勢を理由に、防衛強化を鮮明にする政権の意向を色濃く反映しているといえよう。18年度予算案に隠すかのように、17年度の補正予算案に、迎撃ミサイル関連費用など計2300億円余りを計上していることも見逃せない。

 核・ミサイル開発を続け、挑発を繰り返す北朝鮮を警戒するのは分かる。だがあくまで平和的な解決に向けて最大限の努力をするのが筋である。防衛費の使い道が、どれだけの国民の腹に落ちるのだろう。

 例えば、F35A最新鋭ステルス戦闘機6機を785億円で購入する。新型潜水艦の建造には697億円をかける。戦闘機から発射して地上の敵や艦船を攻撃する巡航ミサイル導入費も盛り込む。これらは日本が大原則とする「専守防衛」を逸脱する軍備に当たらないのか。

 先日、政府が2基の導入を決めた米国開発の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」にしても、国民の合意を得たとはいえまい。にもかかわらず、関連費用が補正予算案に28億円、18年度当初予算案には7億3千万円計上されている。

 これらの額はあくまで米国からの情報取得費などの関連経費で本体価格ではない。米ロッキード・マーチン社製の本体を設置するには、さらに1基当たり1千億円かかる見通しだ。2基を本格導入すれば額が跳ね上がるのは分かり切っている。

 しかも効果は未知数という。最新鋭レーダーの搭載などによって、費用は一層膨らむ可能性もある。最終的にいくらになるか分からないそうだ。

 これら装備品の購入が対外有償軍事援助(FMS)に基づくためだ。契約価格や納期など米国が定めた条件を受け入れなければならず、要は米国側の「言い値」とされる。第2次安倍政権発足以来FMSによる購入は急増し、それ以前の3・5倍に膨らんでいる。米に見直しを求めるべきではないか。

 特にトランプ政権は米国製の武器・装備品輸出に血道を上げ、11月に来日した際にも露骨なトップセールスを繰り広げた。日本政府が米国にいい顔をして大盤振る舞いをすれば、国民の暮らしに欠かせない社会保障費などの予算にしわ寄せが及ぶことを忘れないでほしい。

 歳出の3割を超す社会保障費についても、政府は抑制することばかり重視しているように見える。その一方で、防衛費の効率化は検討せずに「聖域」とすることは容認できない。

 年明けの通常国会では国民目線での議論が求められる。

(2017年12月23日朝刊掲載)

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