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交付金拡充 歓迎と懸念 艦載機関連

活性化財源 期待高く 使途多様化 深まる依存

 米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転に絡む県交付金の増額・延長方針を政府が決めた22日、山口県や事業対象地域の岩国市などから歓迎の声が上がった。一方、対象地域では市町向けの再編交付金を使って多様な事業が進められており、基地関連財源への依存体質の深まりを懸念する見方もある。(松本恭治、藤田智、余村泰樹)

 「移転後も負担を抱え続ける地元の実情を踏まえ、要望をしっかりと受け止めていただいた」。村岡嗣政知事は同日、報道陣の取材に応じ、県交付金の拡充を決めた国の判断を評価した。岩国基地問題議員連盟連絡協議会の代表を務める柳居俊学県議会議長も「基地周辺地域のさらなる発展につながることを期待する」とのコメントを出した。

「大いに評価」

 事業対象エリアとなる岩国市と和木、周防大島両町。同市の福田良彦市長は「要望が具体化されたことは大いに評価する」とコメント。和木町の米本正明町長は「関係市町と協議しながら県に要望を上げ、県東部の活性化につなげたい」、周防大島町の椎木巧町長は「騒音の不安を上回る事業ができれば、艦載機を受け入れた意味がある」と述べた。

 県と3市町は11月に国へ出した要望書の中で、県交付金の活用が想定される事業メニューを列挙していた。道路やスポーツ・文化施設の整備などハード事業に加え、新たに対象となったソフト事業も中小企業育成や英語教育の支援など多岐にわたる。

 一方、3市町は既に2008年度から同趣旨の再編交付金を受けており、ハード、ソフト両面で事業経費に振り向けている。上乗せとなる県交付金の拡充は、基地関連の財源依存度の高まりにつながりかねない。

今後も「確約」

 再編交付金について岩国市は、観光施設の建設や子ども医療費助成に活用。和木、周防大島両町も予防接種費助成や教育施設の整備に充てている。17年度の予算計上額(当初ベース)も、岩国市16億9700万円▽和木町3億1900万円▽周防大島町1億3800万円―に上る。

 再編交付金の受給期間は22年度までの予定で、総額は岩国市は約201億円、和木町は約37億円、周防大島町は約23億円となる見込み。艦載機移転を踏まえ、国は再編交付金についても延長・増額を「確約」しており、23年度以降も支給は続く見通しだ。

 県交付金の拡充について、岩国市岩国のアルバイト稲本邦和さん(52)は「企業誘致や低所得者対策など、市民の暮らしに直結する使い方を」と注文。その上で「基地関連の財源に依存しすぎると、国から新たな負担を求められても断れなくなるのでは」と懸念ものぞかせた。

(2017年12月23日朝刊掲載)

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