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米軍再編交付金 2.5倍決定 山口県向け ソフト事業も対象

 政府は22日、在日米軍再編で基地負担が増える都道府県向けの交付金について、2018年度から前年度比2・5倍の年50億円に増額する方針を決めた。現在はハード事業に限っている使い道もソフト事業に広げる。米軍岩国基地(岩国市)への空母艦載機の移転開始を踏まえた措置で、山口県に全額交付する。

 防衛省は理由について「06年当初の再編計画と比べ、機種変更や機数増加があり、基地周辺の騒音予測区域も拡大した点を考慮した」と説明。19年度までの支給期間も27年度まで延長する方針で、「地元の要望を踏まえ、来年度から10年間の交付額を確保する」としている。

 同交付金は15年度に創設。全国で山口県だけに支給されており、同県内の岩国市と周防大島、和木両町での事業が対象となる。15年度に18億5200万円▽16年度に20億円▽17年度は20億1千万円―が支給された。18年度当初予算案には50億円を計上している。

 同予算案では、市町村に国が直接支給する「再編交付金」も全体で67億円を計上。同県内の1市2町に加え、隣接する大竹市にもこれまで通り配分される見込み。

 一方、今年8月に始まり来年5月までに完了予定の艦載機移転に伴う関連費は29億3100万円(契約ベース)で、大半の施設整備が完了したことなどから前年度比84%減となった。

 艦載機移転に関連し、国が陸上空母離着陸訓練(FCLP)の候補地とする馬毛島(鹿児島県西之表市)への訓練施設配置を検討するための経費2億4500万円(契約ベース)も引き続き盛り込んだ。(和多正憲)

【解説】安心・安全対策 なお課題

 在日米軍再編に伴い全国で唯一、山口県だけに支給されている都道府県向けの交付金が、年額50億円と2倍以上に増えることになった。空母艦載機61機の岩国移転開始に伴う負担の対価として、国が地元要望に最大限応じた。ただ、米軍機の事故が相次ぐ中、地元が求める安心・安全対策は万全とはいえない。

 地元関係者が「岩国スペシャル」と称する異例の措置。8月の移転開始時には既に道筋が付いていた。県側は「10年で計約1千億円」が交付された沖縄県の北部振興事業を念頭に国側と交渉を継続。6月の山口県や岩国市の受け入れ表明に合わせ、前向きな回答を引き出した。移転前提の条件闘争で得た成果といえる。

 県や市町向けの交付金は、いずれも再編への協力度合いに応じて支給される。道路整備から学校耐震化まで幅広い事業の財源となっている。まちづくりへの影響を考えると、地元は反対の声を上げにくくなる側面もある。実際、かつて移転反対を掲げた岩国市では庁舎建設に関わる支給を凍結された経緯もある。

 来年5月までに艦載機部隊の移転が完了し、イワクニは極東最大級の航空基地となる。低空飛行や墜落のリスクなど、住民の暮らしに直結する諸課題は解決されるのか。これから後、再編計画以外の米軍機の配備や訓練移転はないのか。防衛政策に理解と協力を示す地元に対し、国は、交付金をさらなる負担を強いる「免罪符」にしてはならない。(和多正憲)

(2017年12月23日朝刊掲載)

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