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島根2号機 遠い再稼働 中電 安全審査申請から4年 同意判断 知事選以降か

 中国電力が島根原発2号機(松江市)の安全審査を原子力規制委員会に申請して25日で4年になった。審査停滞の要因となっていた原発近くの宍道断層の長さが決まり、来年には審査が終盤に向かう見通しだ。ただ再稼働への課題も多く、時期は早くても島根県知事選がある2019年春以降との見方が強まっている。(河野揚)

 「おおむね妥当な検討がなされた」。規制委が1日に東京都内で開いた審査会合。石渡明委員が中電の資料をこう評価すると、約30分の短時間で会合が終わった。規制委側から厳しい指摘は出なかった。

宍道断層延長

 審査が順調に進み出した背景には、宍道断層の長さの確定がある。審査申請時は22キロとしていたが、規制委は4年間でさまざまな知見に基づいて疑問を示し、そのたびに審査が滞ってきた。規制委によると、審査全36項目のうち、現在5項目しか終えていない。

 中電は最終的に宍道断層の西端も東端も延ばして39キロと見直し、規制委が9月に了承した。今月には断層の延長を踏まえ、耐震設計の目安となる地震の揺れの大きさ「基準地震動」を820ガル(ガルは加速度の単位)と規制委に提示した。

 基準地震動は従来の800ガルから小幅な上昇にとどまり、来年前半にも規制委が了承する可能性がある。審査の節目といわれる基準地震動が確定すれば、審査は終盤の設備側に進む。原発から30キロ圏に入る鳥取県の平井伸治知事は「来年は審査終結のヤマ場になる。防災対策を急がないといけない」と受け止める。

 中電は、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が10月に審査に事実上合格したのもプラス材料とみる。それまで合格したのは全て加圧水型だったが、島根2号機は、柏崎刈羽や福島第1原発と同じ沸騰水型だからだ。清水希茂社長は「(審査の)ひな型ができた」と審査の加速を期待する。

 だが、規制委の更田豊志委員長は、立地場所によって必要な災害対策が異なるため「審査期間が短くなることはないだろう」との認識を示す。11月には重大事故対策として新たな冷却装置の設置も義務化されており、設備の審査が順調に進むかは不透明な面もある。

争点化避ける

 再稼働には地元自治体の同意も必要になる。島根、鳥取の両県は19年春に知事選を控える。ある経済産業省幹部は「原発再稼働が争点になるのを避けるため、同意の判断は知事選後になるだろう」と分析する。

 来年は建設中の3号機の審査を申請するかどうかも焦点になる。清水社長は基準地震動が決まれば、地元同意を得て申請する考え。ただ島根県の溝口善兵衛知事は3号機の必要性について「国の電力政策の中で検討された上で決まる」と述べ、同意に慎重な姿勢を見せる。中電には、地元自治体への丁寧な説明が求められる。

 島根原発を巡っては、住民が運転差し止めを求めて広島高裁松江支部と松江地裁でそれぞれ争っている。司法の判断も再稼働に影響しそうだ。

〈島根原発を巡る主な動き〉

2011年  3月  東京電力福島第1原発事故
  12年  12月 2号機が定期検査に入り運転停止。島根原発の稼働がゼ            ロになる
       9月  原子力規制委員会が発足
  13年  7月  新規制基準が施行
       12月 中国電力が2号機の安全審査を申請
  16年  1月  中電が宍道断層の長さの評価を22キロから25キロに            延長し、規制委が一旦了承
       2月  中電が基準地震動を600ガルから800ガルに引き上            げる考えを規制委に伝える
       7月  政府の地震調査研究推進本部が宍道断層の長期評価で            「約21キロもしくはそれ以上」と発表
       11月 規制委が宍道断層の東端の根拠を再度説明するよう中電            に求める
  17年  9月  中電が宍道断層の長さの評価を25キロから39キロに            延長し、規制委が了承
       12月 中電が基準地震動を800ガルから820ガルに引き上            げる考えを規制委に伝える

(2017年12月26日朝刊掲載)

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