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連載・特集

ヒロシマの記録2017 7~12月 ICAN 世界が共鳴

7月

3日 被爆者健康手帳を持つ被爆者の平均年齢が3月末時点で81・41歳とな    り、前年より0・55歳高くなったと厚生労働省の集計で判明。所持者は    16万4621人で9459人減少▽毎月6日に広島市中心部のバーで被    爆証言会を続けていた冨恵洋次郎さんが37歳で死去▽スウェーデンのS    IPRI公表の報告書で、1月時点の世界の核兵器数を1万4935個と    推定。北朝鮮は10~20個の可能性▽米ニューヨーク・国連本部での核    兵器禁止条約制定交渉会議で、ホワイト議長が条約最終案を提示。前文に    「被爆者」の苦しみと努力の記述が残り、禁止事項では使用をちらつかせ    る「威嚇」を明示
4日 北朝鮮が、北西部の平安北道亀城市方峴付近から日本海に向け弾道ミサイ    ルを発射。国営メディアを通じて「特別重大報道」を発表し、新たに開発    したICBM「火星14」の発射実験に「成功した」と表明
7日 核兵器禁止条約制定交渉会議最終日、条約案を122カ国の賛成多数で採    択。国際条約として初めて核兵器の使用や開発、保有など関連活動を全面    的に禁じる▽禁止条約を巡り、米英仏3カ国が「国際的な安全保障環境の    現実を無視している」と批判し、署名する意思はないとする共同声明を        発表。日本の別所浩郎国連大使も「署名しない」と言明
20日 日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定が発効
23日 中国新聞社が、各都道府県と中国地方5県の各地域にある被爆者団体に     活動状況などを尋ねたアンケート結果を報道。回答した108団体のう     ち、59団体が被爆2世たちを加えての組織存続に意欲を持つ一方、2     7団体は会員の被爆者がいなくなればなくなるとの見通しを示す
28日 広島市が現代美術作家を顕彰するヒロシマ賞をレバノン出身のモナ・ハ     トゥムさんに贈る▽北朝鮮中部から弾道ミサイルが発射され、45分間     飛行して日本の排他的経済水域(EEZ)に着水したもようと、菅義偉     官房長官が翌日未明に発表
29日 原水禁国民会議などの原水爆禁止世界大会が福島大会で開幕
30日 オバマ前米大統領の妹で、ハワイ大マツナガ平和研究所ディレクターの     マヤ・ストロさんが広島市でのイベントにゲスト参加。会見でオバマ氏     が市へ贈った折り鶴について「ヒロシマへの認識や思いやりを示したか     ったのだと思う」と述べる
31日 米国のアーティスト、キャノン・ハーシーさんらが被爆75年まで続け     る平和発信の取り組み「ヒロシマ・ナガサキ ゼロプロジェクト」開始     を発表

8月

2日 広島市での広島県主催の「ひろしまラウンドテーブル」が2日間の日程を    終え、核保有国と「核の傘」に頼る同盟国が広島に集い、核兵器廃絶のプ    ロセスを具体化するための国際会議を開くよう提言▽広島市内最大級の被    爆建物、旧陸軍被服支廠(ししょう)で、県が活用策の検討に向けた耐震    性調査を開始
3日 日本原水協などの原水爆禁止世界大会が広島市での国際会議で開幕▽原爆    投下は民間人の殺りくを禁じる国際法に反しているとして、広島で被爆し    た韓国人や2世ら計4人が、米政府や原爆の製造、投下に関わった米企業    に賠償などを求め、韓国・大邱地裁に調停を申し立て
5日 国連安全保障理事会が、北朝鮮による2回のICBM発射を受け、米国主    導の新たな制裁決議を全会一致で採択。主産品の石炭や海産物の輸出を全    面的に禁止するのが柱
6日 被爆72年の原爆の日。広島市の松井一実市長は平和記念式典での平和宣    言で、核兵器禁止条約の締結促進へ政府に「核保有国と非核保有国との橋    渡しに本気で取り組んでほしい」と呼び掛け。80カ国と欧州連合(EU)    の代表が参列▽安倍晋三首相は式典出席後の記者会見で、核兵器禁止条約に    署名、批准しない考えを明言。防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の見直    しが必要との考えも示す
8日 平和首長会議総会が長崎市で始まり、核兵器廃絶の目標年とする2020    年までの新たな行動計画を決定。核兵器禁止条約を全ての国が早期に締結    するよう、署名集めや各国政府への要請に力を入れる
9日 長崎原爆の日▽米軍岩国基地に、空母艦載機移転計画の第1陣としてE2    D早期警戒機5機が到着。移転が完了すれば所属機は約120機に倍増し    極東最大級の米軍基地に▽北朝鮮の朝鮮人民軍の戦略軍司令官が、グアム    周辺へのミサイル発射計画を実施すれば島根、広島、高知3県の上空を通    過すると予告
13日 日米両政府が沖縄の施政権返還で合意した1969年11月の首脳会談     直前、愛知揆一外相(当時)の意向を受けた外務省幹部がキッシンジャ     ー米大統領補佐官(同)に対し、返還後、有事の沖縄への核再持ち込み     に「異論はない」と外交ルートで公式に伝えていたと機密解除された米     公文書で判明
18日 14年以来続いていたジュネーブ軍縮会議での日本の高校生平和大使の     演説が17年は見送られたと判明
26日 北朝鮮が、東部江原道の旗対嶺付近から北東方向の日本海上に短距離ミ     サイルを連続発射
29日 北朝鮮が、首都平壌の順安区域付近から弾道ミサイル1発を北東方向に     発射、北海道襟裳岬上空を通過
30日 長崎で被爆した日本被団協代表委員の谷口稜曄(すみてる)氏が88歳     で死去

9月

2日 被爆者で元長崎大学長の土山秀夫氏が92歳で死去
3日 北朝鮮が国営メディアを通じ、ICBM搭載用の水爆実験に「完全に成功    した」と発表。6回目の核実験▽北朝鮮の核実験を受け、原爆資料館が地    球平和監視時計に表示している「最後の核実験からの日数」を「359」    から「0」にリセット
4日 韓国の宋永武(ソン・ヨンム)国防相が韓国国会で、在韓米軍から撤去さ    れたとされる戦術核兵器の再配備を「検討しなければならない」と述べる
6日 小野寺五典防衛相が、北朝鮮の核実験の爆発規模の推定を160キロトン    (TNT火薬換算)と明かす▽自民党の石破茂元幹事長がテレビ番組で、抑    止力向上のため、国内に米軍核兵器を配備する是非を議論すべきだとの考え    を示す
10日 米軍統治下の沖縄で1959年に核弾頭を搭載したミサイルが誤って発     射され、海に突っ込んでいたとNHKが特集番組で報じる
11日 国連安全保障理事会が北朝鮮の核実験で公開会合を開き、石油精製品の     供給や原油輸出に上限を設けることを柱とする米国主導の制裁強化決議     案を全会一致で採択
15日 北朝鮮が平壌から弾道ミサイル1発を東北東方向に発射し、北海道上空     を通過
19日 トランプ米大統領がニューヨークの国連本部で就任後初の国連総会一般     討論演説。北朝鮮を世界共通の脅威と非難し、米国や同盟国の防衛を迫     られれば「完全に破壊」するしか選択肢がなくなると警告
20日 核兵器禁止条約の署名開始。9月内に53カ国・地域が署名し、うち3     カ国が批准
21日 軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合がニューヨークであ     り、国連安保理の北朝鮮制裁決議の履行を各国に要求する共同声明を採     択
23日 北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相が国連総会一般討論演説で、北朝鮮     の弾道ミサイルの米全土到達が「避けられなくなる」と述べ米政権に警     告
24日 原爆資料館の入館者数が累計7千万人を超える

10月

1日 トランプ米政権が作る核戦略の指針「核体制の見直し(NPR)」に、小    型戦術核の開発や配備の推進を盛り込む案が浮上していると判明
3日 母親や兄妹ら親類13人を原爆で失い、自身も入市被爆。平和記    念公園の原爆供養塔の清掃を40年以上続け、名前が判明してい    る遺骨の遺族を捜し歩きながら体験証言を続けた佐伯敏子(さい    き・としこ)さんが市内の病院で死去。97歳
6日 ノルウェー・ノーベル賞委員会がノーベル平和賞をICAN(本部スイス・    ジュネーブ)に贈ると発表。核兵器禁止条約制定への「革新的な努力」をた    たえる。ICANのフィン事務局長は共同通信のインタビューに「広島、長    崎の被爆者全員へも与えられる賞だ」▽ウッド米軍縮大使が共同通信の取材    に、ICANのノーベル平和賞受賞決定について「核軍縮に実質的な影響を    及ぼさないし、核兵器を一つも減らすことにならない」と述べる
7日 朝鮮労働党中央委員会総会で金正恩党委員長が「党が経済建設と核戦力建    設の並進路線を堅持し前進してきたのは極めて正しく、今後も変わらずこ    の道を進むべきだ」と表明
13日 トランプ米大統領が、2015年のイラン核合意がイランの弾道ミサイ     ル開発を黙認するなど「深刻な欠陥」があるとし、核合意の実効性を認     めない方針を表明。合意の枠組みに当面とどまるが、米議会や同盟国と     の協議を通じて問題を解決できなければ破棄すると警告
27日 国連総会第1委員会(軍縮)が、日本が主導する核兵器廃絶決議案を賛     成144、反対4、棄権27で採択。核兵器禁止条約に直接触れず、非     人道性に関する表現も後退し、賛成は前年から23減、棄権は10増

11月

6日 安倍晋三首相と、就任後初来日したトランプ米大統領が東京で会談し、核・    ミサイル開発を強行する北朝鮮に政策を変えさせるため圧力を最大限に高め    る方針を確認
10日 国際赤十字・赤新月運動の代表者会議がトルコで核兵器廃絶を目指す行     動計画を採択。核兵器禁止条約に全ての国が早急に参加し、条約を履行     するよう求める▽バチカンで日本被団協事務局次長の和田征子さんが法     王フランシスコに面会。法王が「核兵器の保有だけでも断固として非難     されるべきだ」と述べ、核保有を初めて明確に批判したと後に判明
12日 ヒロシマ・ピース・センターが「原爆の図丸木美術館」に谷本清平和賞     を贈る
15日 広島市の松井一実市長がバチカンで法王の一般謁見に参列し、被爆地訪     問を要請
16日 8月のジュネーブ軍縮会議で核兵器廃絶を訴える予定だった高校生平和     大使の演説が、中国政府の日本政府に対する圧力で見送られていたと判     明
19日 1969年の沖縄返還交渉の過程で、有事の際に日本本土へ核兵器を持     ち込むことを日本側と合意できないか、米政府が内部で可能性を探って     いたと機密解除された米公文書で判明▽核兵器搭載が可能な米空軍のB     52戦略爆撃機が8月、日本列島上空を横断し、航空自衛隊のF15戦     闘機と日本海上空で共同訓練をしていたと判明。日本海上空での空自戦     闘機とB52との訓練が公になるのは初
24日 広島市の原爆供養塔に安置されていた高橋脩さんの遺骨を長男が72年     ぶりに引き取り
27日 核軍縮進展の方策を探る外務省の「賢人会議」第1回会合が2日間の日     程で広島市で始まり9カ国15人が出席。2018年春までに取り組み     を提言へ
28日 原爆症認定申請を国が却下したのは不当として、広島で被爆した24人     が国に却下処分の取り消しなどを求めた訴訟で広島地裁が原告側全面敗     訴の判決
29日 北朝鮮が西部から日本海に向け弾道ミサイル1発を発射。新型のICB     M「火星15」の発射実験に成功したとする政府声明を発表▽国連軍縮     会議が広島市で2日間の日程で始まる。核兵器禁止条約の交渉会議議長     を務めたコスタリカのホワイト大使ら12カ国・2機関から60人が出     席
30日 広島県と広島市が19年の20カ国・地域(G20)首脳会合の関係閣     僚会議の誘致方針を表明

12月

2日 国連施設で原爆資料のガイドを務める職員たちの研修が広島市内で初実施    ▽地下核実験を停止している米国が将来、大統領が必要と判断した場合、    環境保全などの手続きを簡略化し、最短半年で核実験を再開できる体制整    備を進める方針と判明
4日 国連総会本会議が日本主導の核兵器廃絶決議案を賛成156、反対4、棄    権24で採択。賛成は前年から11減、棄権は8増
6日 広島市教委が、市立小中学校で原爆の日の平和学習を「学校行事」として    実施することで来年以後は登校日にできるようになったと明かす▽今年の    ノーベル文学賞作家で長崎生まれの英国人カズオ・イシグロ氏が記者会見    で、母親が長崎への原爆投下で被爆したとして、ICANの平和賞受賞は    「核の歴史の重要性に光を当てることで大きな喜びだ」と語る
8日 国際記念物遺跡会議(イコモス)国内委員会が、原爆ドームの世界遺産登    録に原爆資料館と平和記念公園を追加するよう提案▽核兵器禁止条約に新    たに3カ国が署名。累計56カ国・地域に
10日 ICANへのノーベル平和賞授賞式がノルウェー・オスロ市庁舎で開か     れる。広島市南区出身の被爆者でICANの活動を支えてきたサーロー     節子さんが受賞演説で、核兵器禁止条約を「核兵器の終わりの始まりに     しよう」と訴え。日本被団協の田中熙巳代表委員や広島市の松井一実市     長らが招かれて出席
11日 広島市が、リニューアル工事中の原爆資料館本館の再オープンが201     9年春にずれ込むと発表
12日 ICAN受賞企画展の一般公開がオスロでスタート。原爆資料館が貸し     出した動員学徒の遺品など被爆資料が並ぶ
13日 広島高裁が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを決定。東日本大震     災後に再稼働した原発を止める初の高裁判断
15日 北朝鮮問題を討議する国連安全保障理事会の閣僚級会合で、異例の出席     をした北朝鮮の慈成男(チャ・ソンナム)国連大使が核武装を正当化
18日 最高裁第1小法廷が、国などに被爆者健康手帳交付を求めた長崎の「被     爆体験者」を被爆者と認めず、387人の敗訴確定
21日 湯川秀樹が終戦前後に書き残した日記を京都大が初公開。原爆研究に関     わった記述があるほか、広島や長崎の原爆被害を詳細に記す
22日 国連安全保障理事会が北朝鮮による11月の新型ICBM発射を非難し     新たな制裁を盛り込んだ米国作成の決議案を全会一致で採択。北朝鮮へ     の石油精製品の輸出の9割削減など

(2017年12月31日朝刊掲載)

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