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社説・コラム

天風録 『「対話」の年に』

 人生の大先輩たちから届いた年賀状に、示し合わせたように同じひとことがしたためられていて驚いた。<戦争する国になりませんように>。年をまたいで漂う不穏さが念頭にあったのだろうか▲現に元日早々かの国の指導者は「核のボタンは常に私の机の上にある」と威嚇してみせた。対する核超大国のトップは武力をちらつかせながら「力による平和」を掲げる。平和憲法を持つ国の政府もなぜか、その「力」を信奉していて足元は危うい▲ペンを握る人間として先輩方にどう応えようか。考え込んでいた時、経済学者暉峻淑子(てるおか・いつこ)さん(89)の言葉に触れ、ハッとした。戦争・暴力の反対語は平和ではなく対話です―。近著「対話する社会へ」で、人と人とをつなぎ、平和や民主主義を生み出す「対話」の意義を説く▲単なる「会話」でも、二手に分かれてどちらかに軍配を上げる「討論」でも、双方の主張を足して2で割る「妥協」でもない。暉峻さんの言う「対話」とは互いに人格を認め合い、対等な立場で向き合うことだそうだ▲昨年は「排除」や「分断」が国内外でキーワードとなった。今年はそんな年にはしたくない。まずは身近なところから対話を心掛けねば。

(2018年1月3日朝刊掲載)

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