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レストハウスなど被爆建物 国史跡へ申請検討 広島市 保存に国費活用

 広島市にある被爆建物の国史跡への指定を目指し、市が国への申請を検討していることが5日、分かった。平和記念公園のレストハウス(旧大正屋呉服店)や旧日本銀行広島支店など、いずれも爆心地から1キロ以内にある中区の5件を候補に考えているとみられる。実現すれば国費を活用した保存・整備の充実や、被爆の惨禍の発信力強化につながる。

 複数の関係者によると5件は、2016年公開の人気アニメ映画「この世界の片隅に」に登場するレストハウス(爆心地から170メートル)▽市重要文化財の旧日銀支店(380メートル)▽本川小平和資料館(410メートル)▽袋町小平和資料館(460メートル)▽広島城本丸跡にある中国軍管区司令部跡(790メートル、旧防空作戦室)。市は既に有識者でつくる検討会を数回開催。昨年はメンバーがレストハウスと旧日銀支店を視察に訪れるなど文化庁への意見具申に向けた準備を進めている。

 市文化スポーツ部は「今は何もコメントできない」としている。

 もう一つの被爆地の長崎市では、核兵器の被害や戦争の悲惨さを如実に伝えているとして、16年10月、爆心地や旧城山国民学校校舎など5カ所の被爆遺構が「長崎原爆遺跡」として国史跡に指定された。いずれも爆心地から800メートル以内に点在。国史跡は国の補助を受けられ、保存や整備を充実できる。一方で現状変更などについて文化庁との協議が必要となり、一定の制限が課せられる。

 広島市は現在、被爆建物として86件を登録。うち被爆時に広島県産業奨励館だった原爆ドームは1995年6月に国史跡となり、翌96年12月に世界遺産へ登録された。新たな史跡が指定されれば、原爆ドームは史跡の中でも特に重要な特別史跡へ「格上げ」される可能性がある。文化庁によると17年12月1日時点で、国の史跡は1795件あり、うち62件が特別史跡に指定されている。(渡辺裕明)

(2018年1月6日朝刊掲載)

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