社説・コラム

社説 南北閣僚級会談 非核化の目標見失うな

 韓国と北朝鮮がきのう、軍事境界線のある板門店で、南北閣僚級会談を開いた。

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)前政権下で途絶え、2年1カ月ぶりに開かれた南北会談である。核・ミサイル開発で国際的に孤立する北朝鮮が韓国を抱き込もうとする思惑も透ける。だが、会談が朝鮮半島の緊張緩和に向けた第一歩となることを期待したい。

 会談で北朝鮮は、正式に来月の平昌冬季五輪への参加を表明した。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨年春に就任して以来、参加を呼び掛けていた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も新年の辞で、選手団を送る用意があるなどと述べていた。

 五輪を契機に南北関係が改善に向かい、朝鮮半島の軍事的緊張が和らぐならば、歓迎すべきことだろう。

 ただ、真の平和と安定は北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄してこそ実現するものである。韓国は、国際社会が求める朝鮮半島の非核化という目標を見失ってはなるまい。

 韓国側は会談で、北朝鮮側に「軍事的緊張を高める行為を中断し、非核化など平和定着のための対話再開が必要」と提案したことを明らかにした。北朝鮮側は特別な言及や反応をしなかったそうだが、韓国側がそうした姿勢を示すのは当然だ。

 北朝鮮が今回、南北会談に応じたのは、対話を重視する韓国と、圧力重視の米国や日本との連携に、くさびを打つ狙いがあるとも指摘される。「平和五輪」を掲げる文氏に「貸し」をつくり、利用しようという狙いもあるのではないか。

 米韓は、北朝鮮が挑発行動を取らないことを前提に、定例の合同軍事演習を、平昌パラリンピック後に延期することで既に合意している。だが北朝鮮は米韓合同軍事演習の全面中止を迫ってくるかもしれない。経済面でも、朴前大統領が稼働を全面中止した開城(ケソン)工業団地の再開を求めてくる可能性もある。非核化しない限り、そうした要求は毅然(きぜん)とはねつけねばならない。

 五輪への選手団派遣にしても北朝鮮側の滞在費用などを韓国側が負担することになれば、国連安保理の制裁決議や韓国の独自制裁にも抵触するだろう。

 米政府は、北朝鮮の五輪参加について、国際社会を巻き込んだ圧力強化策が過去にないレベルで効果を上げ、北朝鮮の軟化を促したとみているようだ。実際、会談に臨んだ北朝鮮代表団は、公開を提案するなどしていた。南北融和ムードを演出して、国際社会の包囲網に風穴をあけたかったのだろう。

 肝心なのは今後、この南北会談を、北朝鮮の核放棄にどうつなげるかだ。

 安倍晋三首相は今年に入ってからの北朝鮮の姿勢の変化を評価する一方、会談については「対話のための対話では意味がない」と述べている。確かに、南北会談が核開発を進める北朝鮮の時間稼ぎに利用されてはなるまい。核放棄に向けた具体的な行動を引き出す必要がある。

 ただ、だからといって圧力ばかりを強め、せっかくの対話の糸口を手放してはなるまい。以前は対話を「時間の無駄」としていたトランプ米大統領も、今年に入り「状況次第では直接対話してもよい」などと述べている。非核化実現に向け、国際社会の粘り強い説得が必要だ。

(2018年1月10日朝刊掲載)
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