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核禁止条約加盟促す ICAN事務局長 長崎で討論会

広島・長崎を繰り返していいと考えるか

 核兵器禁止条約の制定に貢献し、昨年のノーベル平和賞を受けた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長(35)が13日、訪問中の長崎市で、外務省の担当者らと条約を巡る討論会に参加した。条約に背を向ける日本政府を「広島、長崎を繰り返してもいいと考えるのか」と批判。速やかな加盟へ、被爆地からの一層の働き掛けに期待した。

 長崎大が長崎原爆資料館で開き、市民たち約350人が来場した。フィン氏はまず基調講演し「被爆者なくして、条約は生まれなかった」と原爆被害を発信してきた被爆者たちに感謝。日本政府は条約に参加し、核兵器廃絶を主導するべきだとして、「国民が声を一つに訴えれば政府は無視できない」と、市民に草の根の行動を呼び掛けた。

 続く討論で、外務省軍備管理軍縮課の今西靖治課長は北朝鮮の核開発を挙げ「安全保障環境は厳しく、米国の核抑止力は必要。条約に参加すれば核抑止力の正当性を損ない、国民を危険にさらす恐れがある」と主張。段階的な核軍縮を進める従来の立場を示した。

 これに、フィン氏は「核抑止は一見理性的に聞こえても究極的に大量殺害を招く」と反発。長崎の被爆者、朝長万左男さん(74)、ICANの川崎哲(あきら)国際運営委員(49)も核兵器廃絶へ条約を生かすよう政府に求めたが、議論は平行線をたどった。

 フィン氏は討論会に先立って爆心地公園で献花し、資料館で犠牲者の遺品などを見学した。15日は広島市で若者との対話集会などに臨む。(水川恭輔)

(2018年1月14日朝刊掲載)

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