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社説・コラム

政策変更迫ろう 訴えよう ICAN・フィン事務局長に聞く

ヒロシマの行動に期待

 広島市を訪れた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長(35)が15日、中国新聞の単独インタビューに応じた。核兵器禁止条約への署名を拒む日本政府へ政策変更を強く迫るよう、被爆地の奮起を期待した。(金崎由美)

  ―ノーベル平和賞受賞後、初の海外訪問です。被爆地で何を感じましたか。
 被爆証言を聞き、市民と語る中で、ヒロシマとナガサキは壮絶な体験を希望のメッセージに昇華しているのだと感じた。同時に、政府の政策と市民の間にある大きな隔たりも痛感した。

  ―保有国と非保有国の「橋渡し役を果たす」という政府へ、被爆地の官民はどう向き合うべきですか。
 現状では、日本は核軍縮のリーダーと言えないというのが国際社会の認識だろう。「橋渡し」では不十分で、ヒロシマは条約参加への行動を明確な言葉で政府や政治家へ訴えてほしい。

 被爆の記憶を広く共有するだけでなく、惨禍を繰り返させないために政策変更につなげるのが肝心だ。やはり「核の傘」の下にありながら、条約交渉に加わったオランダの例がある。市民からの働き掛けで原爆被害に触れた国会議員が政府に交渉参加を迫った。

  ―16日には日本の国会議員と会います。どんな狙いがありますか。
 市民が集まり、政府や国会議員に特定の政策を直接訴えるロビー活動は、投票と同様に民主主義の基本。政府に情報公開と説明責任を強いる民主的プロセスだ。それを前に進めるほど、「禁止条約に加わるのは不可能」という今の政府の説明とは異なる選択肢が見えてくるはずだ。

  ―条約制定と平和賞受賞を経たICANの今後の活動の目標は。
 条約の採択時、「各国による署名と批准、発効を目指す努力が始まる」と思った。ノーベル賞をステップとして次の正念場へ私たちはさらに努力する。賞金で基金を設立したのも、そのため。条約加盟を巡る各国の課題を研究したり、政治家にロビー活動したりするのに生かす。

(2018年1月16日朝刊掲載)

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