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被服支廠補修4億円 対象の1棟 広島県試算 耐震化は12億~33億円

 広島市内で最大級の被爆建物で、具体的な保存・活用策が決まっていない旧陸軍被服支廠(ししょう)(南区)について、広島県が、現存4棟のうち1棟を対象に本年度実施した現地調査に基づく補修や耐震化の概算費用が17日、分かった。対象の1棟について4パターンで試算し、劣化防止の補修で約4億円、耐震化で約12億~33億円かかるとした。県は、補修を前提に、この1棟の活用策を探る方針を固めた。

 県は4棟中3棟を所有。最も北側の1号棟の柱や鉄筋、れんがを抽出して強度を調査し、1号棟の改修パターンと費用を①外観を保全する補修が約4億円②内部の一部活用を想定し、3分の1の耐震化が約12億円③内部の一部活用を想定し、全体を耐震化が約23億円④博物館など内部の全体活用を想定し、全体を耐震化が約33億円―とした。

 ①の補修は、雨どいや排水管などの防水設備、屋根瓦の劣化を食い止める対策などを施す。県は当面、1号棟の補修を前提として、建築の専門家たちと効果的な工法を2018年度に検討。現時点で補修を予定しない他の所有2棟も含め、見学客たちを呼び込める活用策を引き続き探る。

 県は、1996年の調査で1棟全体の耐震化に約21億円、博物館として活用する場合に約36億円かかると試算。今回の調査では、耐震工法の進歩などでコストが下がることも期待していたが、数億円の縮減にとどまった。

 被服支廠は、ロシアのエルミタージュ美術館の分館誘致構想が白紙になった06年以降、具体的な活用策の検討が停滞。県が昨年8月、活用策の検討に向けて約21年ぶりに現地調査に乗り出していた。(樋口浩二)

<旧陸軍被服支廠の改修パターン別の概算費用>

改修パターン          概算費用
1棟全体を劣化を防ぐ      約4億円
ため補修(活用方法は未定)
1棟のうち3分の1を      約12億円
耐震化(一部を活用)
1棟全体を耐震化(一      約23億円
部を活用)
1棟全体を耐震化(博      約33億円
物館など全体を活用)

旧陸軍被服支廠
 陸軍兵の軍服や軍靴を製造していた施設で、1913年に完成した。13棟あった倉庫のうち現存する4棟はいずれも鉄筋・れんが造り3階建てで、広島県が3棟、国が1棟を所有する。戦後、広島大の寮や県立広島工業高の校舎、日本通運の倉庫などに利用され、95年以降は使われていない。

(2018年1月18日朝刊掲載)

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