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社説・コラム

キーパーソンがゆく 呉かみしばいのつどい代表(呉市) 関家ひろみさん

呉空襲の紙芝居を監修

平和への願い全国発信

 「悲惨さを強調するのではなく、平和の大切さや命のつながりを多くの人に伝える作品にすることを目指した」。7歳の時に呉空襲に遭った市内の中峠(なかたお)房江さん(80)の体験を基にした紙芝居「ふうちゃんのそら」を監修した。

 呉かみしばいのつどいが2017年7月に自費出版すると、問い合わせが相次ぎ、約300部が完売。現在増刷している。絵本版は1100部を売り上げる。

 紙芝居は、おばあちゃんになったふうちゃんが花火大会の夜、呉空襲の体験を孫に語る。最後の花火のシーンでは「花火を見ると空襲を思い出す」というふうちゃんの手を孫が握り「大丈夫だよ」と繰り返す。

 紙芝居の実演や研究をするグループを12年に発足させた。中峠さんとは地元の自治会館で絵本の読み語りを一緒にしていた。

 中峠さんは毎年7月、幼稚園や児童館などで呉空襲の体験を語っていた。「言葉だけでは伝えるのが難しい。紙芝居として形に残したい」。中峠さんの願いを知り、地元の絵本作家よこみちけいこさん(45)に脚本と絵を依頼した。

 当時の服装や防空壕(ごう)内の様子など細かく中峠さんから聞き取った。「思い出すのは苦しかったと思うが一生懸命教えてくれた。無駄にできないと思った」。仲間とせりふ回しや場面を変えるタイミングなどをさらに詰めた。

 15年7月から県内の保育園や小中学校、高齢者施設など200カ所近くを中峠さん、よこみちさんと巡った。涙を流す人や自らの体験を話す人もいた。

 全国である紙芝居イベントでも作品を演じ、ブログでも発信している。「紙芝居には共に感じ合うことで人と人をつなぐ力がある。平和への願いを託した紙芝居を一人でも多くの人に届けたい」 (今井裕希)

せきや・ひろみ
 1963年、呉市生まれ。90年に呉市立広図書館で絵本の読み語りを始める。95年から文化と子育て支援ネットワーク応援団「サラダボウル」代表も務め、子育てイベントを開催している。2012年から2年間、都内で「紙芝居文化の会」の紙芝居講座に通った。

(2018年1月27日朝刊掲載)

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