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イギリス詩人 被爆地を詠む オーエンさん 48編の詩集刊行

「ヒロシマは永遠に私たちの心の中に」

 広島市の市民グループの招きで被爆地広島を訪れた英国の詩人が、平和やヒロシマを題材に編んだ英語の詩集を出版した。同国中部のコベントリー市に住むアントニー・オーエンさん(45)。「ヒロシマは永遠に私たちの心の中にある」との思いを紡いでいる。

 48編を収めた詩集はA5判、64ページ。冒頭に「全ての被爆者にささげる」と記し、原爆で家族を奪われた広島や長崎の被爆者を描くなどした詩をつづった。収録作品の一つ「The Nagasaki Elder」を詩集の表題とした。

 広島市民13人でつくる「コベントリー会」の招きで2015年5月に市内を訪れ、被爆者や地元の高校生たちと交流した体験が創作の原点となった。「西洋人の立場から、東洋の悲劇を書かねばならないという深い義務感を持った。帰国後も、魂と心がヒロシマを離れなかった」と振り返る。

 オーエンさんが暮らすコベントリー市は、第2次世界大戦中にナチス・ドイツ軍の空襲で壊滅的被害を受けた。平和への思いは強く、同市は毎年8月6日の広島原爆の日に、市長や市民が折り鶴をささげる平和集会を現地で開いている。

 広島市でコベントリー市の戦争被害者を悼む集いを開き、現地と交流を重ねるコベントリー会が、戦争や平和を題材に創作を続けるオーエンさんの活動を知り、招いた。

 詩集には、実際に訪ねた中区の相生橋や本川小などの光景も登場する。同会の岡本秀子代表(63)=安佐南区=は「詩で表現されたイメージをつなぎ合わせると、オーエンさんの平和への思いが湧き上がってくるように感じる」と薦める。

 同会は毎月第2土曜日、南区の市留学生会館で、英語詩を読み解くセミナーを開いている。オーエンさんの詩も扱っており、参加を呼び掛けている。岡本代表☎090(5267)7702。(奥田美奈子)

(2018年1月31日朝刊掲載)

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