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社説・コラム

天風録 『ヘリの音』

 鳥のさえずりを人間の言葉に例える。聞きなしと呼ぶ、そんな遊びがある。「ピーチク…」とも聞こえる春の使者ヒバリだと「日一分(ひいちぶ)、日一分、利取(りと)る、利取る」。金策でばたつき、高利貸の文句に追い回されているようだ▲野鳥の愛好家によれば、実はヒバリは取り立て役で、お日さまが借り手らしい。借金を返さないなら利子を毎日一分もらうぞ、と。聞きなしは、人間の側の聞きようでどうにでも変わる▲ヘリコプターのごう音も、事と次第によっては受け止め方が違ってこよう。病院の屋上などに救命ヘリが着陸する音は、我慢できるどころか、むしろ頼もしく聞こえてくる。命綱の音だからだろう。それに引き換え、自衛隊の戦闘ヘリは…である▲事もあろうに駐屯地近くの民家に落ち、炎上した。これほどまで命を危険にさらせば、住民にとって、もはや耐え難い爆音となりかねない。「空飛ぶ戦車」との異名も取っていたという。救命ヘリとは対極に位置する▲沖縄県民の胸中が察せられる。事故が相次ぐ米軍ヘリに夜昼なく、さいなまれ通し。爆音のやまない空をどれほど恨めしく見上げていよう。戦闘ヘリは、閑古鳥さえ鳴いていないくらいの方がいい。

(2018年2月8日朝刊掲載)

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