社説・コラム

社説 平昌五輪 祭典の原点 見直したい

 韓国・平昌冬季五輪がきょう開幕する。92カ国・地域から2925人もの選手が出場するのは冬季で過去最多だという。

 日本勢の出場は124人に上る。25日まで、7競技102種目でメダルを争う。選手たちには、2年後の東京五輪・パラリンピックに向け、弾みとなるような活躍を期待したい。

 ただ残念なことに、平昌大会は始まる前から、競技以外の政治問題ばかりが注目されている。核・ミサイル開発を続け、国際社会から制裁を受けている北朝鮮が参加を決め、南北融和を演出しているからだ。

 結果として、朝鮮半島の平和と安定に向けた機運が醸成されるのであれば喜ばしいことである。だが五輪はあくまでスポーツの祭典であり、主役は選手たちだ。その戦いぶりにこそ目を向けねばなるまい。

 2大会ぶりの冬季五輪参加となる北朝鮮は、開会式で韓国と統一旗を掲げて共に行進する。五輪史上初めて南北合同チームを結成したアイスホッケー女子の選手団や、応援団、芸術団、高官代表団なども送り込んでいる。経済的圧力を強める日本や米国、韓国による包囲網を打破するため、韓国の軟化を促したいという狙いは今のところ、うまくいっているのだろう。

 北朝鮮が強く反発していた米韓合同軍事演習も、3月のパラリンピック後に延期された。しかしその一方で北朝鮮はきのう、平壌で人民軍創設記念日の軍事パレードを実施した。南北融和を演出してみたところで、それが五輪終了後も続く保証はないことを示したといえよう。韓国をはじめ国際社会は冷静に見極めねばならない。

 安倍晋三首相の開会式出席には、韓国の慰安婦合意を巡る対応への反発から慎重論もあった。だが首相は、政治とスポーツは切り離した上で、日本側の考えを文在寅(ムン・ジェイン)大統領に直接伝えるべきだと判断したという。スポーツの祭典に、政治を持ち込まなかったことは評価できる。

 冬季スポーツを愛する多くの人は、政治的駆け引きに左右されることなく、純粋に競技を楽しみたいと思っているはずだ。

 日本勢は本大会で複数の金メダルを目指す。スピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手やノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅選手は、ロシア・ソチ五輪の雪辱を果たす舞台となる。ソチで金メダルに輝いたフィギュアスケートの羽生結弦選手は男子で66年ぶりとなる2連覇に挑む。ジャンプ男子の葛西紀明選手は、日本勢では史上最多の8度目の出場を果たす。選手はみんな日頃の努力の成果を出し切ってほしい。

 前回のソチ五輪などでのドーピング問題も影を落としている。ロシア・オリンピック委員会は国ぐるみのドーピングで資格停止処分を受け、潔白が証明された選手だけが、個人の資格で参加する。選手たちにはフェアプレーで臨み、競技を通じて他国への理解や友情を育むことを願う。

 国際オリンピック委員会の創設に尽くし、「近代五輪の父」と呼ばれるクーベルタン男爵は「平和でよりよい世界の実現に貢献する」との精神を掲げる。五輪は「平和の祭典」でもある。とかく政治色が前面に出がちな本大会では、その原点を見詰め直す契機にしたい。

(2018年2月9日朝刊掲載)
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