×

ニュース

白内障患者 1人を認定 原爆症訴訟 広島高裁 一審支持

 被爆の影響で白内障を発症したのに原爆症の認定申請を国が却下したのは不当として、広島市で被爆した2人が国に却下処分の取り消しや慰謝料など300万円を求めた訴訟の控訴審判決が9日、広島高裁であった。森一岳裁判長は、1人を原爆症と認め、もう1人を認めなかった一審広島地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。

 2人は爆心地からそれぞれ2・4キロと3キロで被爆した、広島市安佐南区の内藤淑子さん(73)と東広島市の女性(86)。2013年末に国が見直した新たな審査基準でも原爆症と認められていない。

 森裁判長は、新基準の下での放射線量の算定方式について、「地理的範囲や線量を過小評価している疑いがある」とする一審判決を踏襲し、内藤さんについては発症時期や症状から「原爆放射線の影響で発症したとみるのが合理的」と判断。定期的な通院などの「経過観察」も治療のために不可欠な行為とし、放射線起因性も要医療性もないとする国の主張を退けた。

 一方、東広島の女性については「健康に影響を及ぼしうる量の放射線を浴びている」としながらも、白内障の発症は加齢が原因と判断。一審と同様、放射線起因性が認められないとした。

 厚生労働省は「判決内容を精査して今後の対応を決める」としている。一連の訴訟では今回の2人を含め計28人が広島地裁に提訴。昨年11月の地裁判決では、新基準でも原爆症と認められていない心筋梗塞などの別の12人全員が敗訴し、11人が高裁に控訴している。(有岡英俊)

「広く被爆者救済を」 原告側 明暗分かれる

 一審に続き、明暗が分かれた。9日、広島高裁であった原爆症認定訴訟の控訴審判決。判決後、広島市中区で会見を開いた原告側には不満と安堵(あんど)が交錯した。

 認定された原告団長の内藤淑子さんは「光が差したよう」と喜びをかみしめる一方、「国は被爆者を広く救済すべきだ」とし、被爆状況などで変わる認定の在り方に疑問を訴えた。認定されなかった東広島市の女性は2011年の提訴から7年。夫(91)と判決に臨んだが、2度目の敗訴に「諦めるしかないのか…」と肩を落とした。

 一方で、原告側は、症状の悪化や再発のリスクがある場合の経過観察に要医療性があると認めた点を評価。被爆者の支援を続ける広島共立病院(安佐南区)の青木克明医師(69)は「手術から時間が経過していると認定されないケースが多く、申請を諦める被爆者もいる。申請や認定を後押しする判断だ」と強調した。

 判決を受け、日本被団協の代表たち9人は厚生労働省を訪れ、原爆症認定制度を抜本改正し、訴訟を全面的に解決するよう申し入れた。省内で記者会見した大岩孝平代表理事(85)は「高齢の被爆者が訴訟を起こさなければ認められない制度は人道に背く。認定の幅を司法の判断と同等に広げてほしい」と訴えた。(新山京子、有岡英俊、田中美千子)

(2018年2月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ