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[イワクニ 地域と米軍基地] 三が日・盆の飛行前提 運用マニュアル 確認事項に違反

 米軍岩国基地(岩国市)の運用マニュアルに、正月三が日と盆期間中の米軍機の訓練、飛行を前提とした記述があることが20日、分かった。基地と岩国市などは「三が日は訓練しない」「盆は飛ばないようにする」と確認しているが、その内容に反している。確認事項に違反する飛行や訓練が繰り返される中、市は、マニュアルの存在を知りつつも内容を把握していなかった。(明知隼二)

 同基地の「航空運用マニュアル」は、基地内全ての部隊や航空機を対象に、滑走路運用や弾薬の取り扱い、民間機の管制、事故対応といった運用ルール全般を定める。2016年6月に改定され、基地のホームページに掲載されている。

 マニュアルによると、滑走路の運用時間は、曜日を問わず午前6時半~午後11時。平日午後9時以降や日米の祝日などは騒音低減に取り組む時間帯とする。離着陸は可能とする一方、「タッチ・アンド・ゴー」など大きな騒音を伴う訓練を制限している。

 ただ、三が日と盆期間中で祝日と定めるのは1月1日と8月13~15日。1月2、3の両日と8月16日は平日と同じ訓練ができる。

 一方、基地と岩国市などでつくる岩国日米協議会の確認事項では、飛行に関する項目の中に「三が日は訓練を行わない」「盆の13日から16日は飛ばないようにする」とある。マニュアル内容は、協議会の確認事項とは異なっている。

 実際、米軍機は三が日や盆期間中に離着陸を繰り返している。市によると、昨年8月13~16日に基地周辺の測定地点2カ所で70デシベル以上の騒音を計79回測定。1月2、3の両日には計34回記録し、三が日に飛んだのは少なくとも6年連続となった。

 同基地は、中国新聞の取材に「保安上の理由で運用の詳細は話していない」と回答。マニュアルと確認事項の食い違いについて具体的な回答はなかった。

 岩国市の高田昭彦・基地政策担当部長は「マニュアルの存在は把握していたが内容を精査していない。だが米軍は確認事項を尊重すると言っている。信頼関係の中で順守を求めていく」と説明。確認事項との食い違いについて基地側に説明を求める予定はないとする。

      米軍岩国基地「航      岩国日米協議会の確認事項
      空運用マニュアル
      」の内容
1月1日  祝日扱い          正月三が日は訓練を行わない
      (離着陸は可能)
2日    訓練が可能               〃
3日       〃                〃
8月13日 祝日扱い          盆の13日から16日
      (離着陸は可能)      は飛ばないようにする
14日      〃                〃
15日      〃                〃
16日   訓練が可能               〃

岩国日米協議会
 岩国市と山口県、国、米軍岩国基地(同市)が、米軍機の運用ルールなどを話し合う場として1971年に設置した。午後10時以降はタッチ・アンド・ゴーを禁止するなど飛行や着艦訓練の規制など16項目について確認している。協議会は91年を最後に開かれていない。

【解説】ルール 実効性再確認を

 米軍岩国基地の「航空運用マニュアル」に、騒音問題に関する地元との確認事項に反する内容が含まれていた。基地側が地元との合意をどこまで重く受け止めているのか、疑念を生じさせる問題だ。岩国市は実効性のあるルールづくりに向け、早急に基地側に働き掛ける必要がある。

 正月三が日と盆期間の飛行や訓練はこれまで、市が基地に自粛要請しても繰り返されてきた。なぜか―。基地は「全ての飛行運用は任務遂行上不可欠」と説明してきた。しかし、理由はマニュアルにもあった。地元が求める内容は反映されておらず、三が日と盆期間の飛行を巡るルールは破られることが前提だったと言える。

 もちろん、基地が確認事項全てを軽んじているわけではない。しかし、住民の負担が大きい騒音に関するルールには誠実に対応すべきだ。

 市の姿勢にも疑問がある。マニュアルについて基地にただす予定はないという。騒音などの現状を精査した上でルールが確実に守られるようマニュアルの見直しを求めるのが当然だ。

 確認事項を決めた岩国日米協議会は1991年を最後に開かれていない。空母艦載機が移転し、基地を取り巻く環境は変化のただ中にある。その変化にも対応したルールを協議する努力が、基地と地元双方に求められている。(明知隼二)

(2018年2月21日朝刊掲載)

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