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社説・コラム

社説 米軍機タンク投棄 トラブル続発 目に余る

 米軍三沢基地(青森県)所属のF16戦闘機が飛行中にトラブルを起こし、基地北側の小川原湖に2個の燃料タンクを投棄した。人的被害はなかったが、在日米軍のヘリコプターや飛行機のトラブルは今年だけで5件目となる。全米軍機の飛行をやめ、原因究明を急ぐべきだ。

 このF16は離陸直後、エンジン火災が発生。引火を防ぎ、機体を軽くするため、定められた緊急時の手順に沿って外付けのタンクを落としたとみられる。

 米軍は「湖近くの人けのない所に落とした」と説明している。確かに住宅街などではなかった。しかし小川原湖は全国3位の漁獲量を誇るシジミの好漁場で、約100隻の漁船が湖に出ていた。タンクは漁船から200~400メートル離れた所に落ちた。「一歩間違えれば大惨事だった」と住民が不安に思うのも無理はない。

 米軍機のトラブル続発は目に余る。昨年10月にはCH53E大型輸送ヘリコプターが民間の牧草地に不時着して炎上した。12月にはCH53Eの窓が外れ、小学校の校庭に落ちた。今年も1月だけでヘリの不時着が3件起き、2月にも輸送機オスプレイの部品が落下した。全て沖縄県内で起きている。

 これほど続くと、ヒヤリとしたミスの積み重ねが小さな事故の原因となり、その積み重ねが重大事故の原因となる「ヒヤリハット事例」が示すように、さらに重大な事故が起きないか不安が募っても仕方あるまい。

 在日米軍については、緊迫する朝鮮半島情勢を受けて活動が活発化し、現場に過重な負担がかかっているのではないかとも指摘される。自衛隊も、米軍との共同歩調が以前より増え、似たような状況かもしれない。実際、2月にヘリが佐賀県で民家に墜落し、乗員2人が死亡する事故を起こしている。

 米軍と自衛隊の岩国基地を抱える私たちも、青森や沖縄の問題だと済ませられない。

 特に空母艦載機移転で極東最大級へと変貌しつつある時期である。廿日市市上空を市街地へ向け低空飛行するヘリの写真が米海軍の公式ホームページに掲載され、懸念が広がっている。

 広島市内でも、市によると米軍機の目撃が本年度は30件を超え、昨年度1年間の5件を大幅に上回っている。大半が12月以降に集中しているという。

 米軍の訓練空域・ルートは、中国山地の上空に「エリア567」と「ブラウンルート」、四国上空には「オレンジルート」がある。今後、中国山地で訓練が本格化し、騒音が増す恐れを指摘する専門家もいる。被害やトラブルのリスクを私たちは、直視する必要がある。

 暮らしに影響することも忘れてはならない。岩国基地と市は米軍機の訓練や飛行は正月三が日と盆期間中は避けることを確認している。ところが、基地の運用マニュアルに、それに反する記述があることが分かった。

 再三のトラブルを受け、日本政府は米軍に徹底究明や再発防止を要望してきた。しかし改善された感じは乏しい。米軍が本気で改めようとしないのは、日米地位協定で優遇されていることも一因ではないか。このままでは住民の安全はもちろん最低限の平穏な暮らしも守れない。政府は協定見直しも視野に、粘り強く改善を目指すべきだ。

(2018年2月23日朝刊掲載)

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