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2012政治決戦 原発政策 揺れる上関

 中国電力の原発建設予定地である山口県上関町を抱える山口2区では、原発建設の是非が今回の総選挙の争点に再浮上している。2030年代の原発ゼロ方針を掲げた民主党政権に対し、自民党はここにきて安全性の確保などを条件に推進の立場をにじませる。新増設を認めない政府方針が政権交代で「ご破算」になる可能性もあり、30年間も対立を続けてきた計画賛成、反対両派の住民を揺さぶっている。(久保田剛)

 「ひさしぶりにうれしいニュース。どう思われるか」。18日の上関町。参院議員から転身する自民党新人の岸信夫氏(53)のミニ集会で町民が問い掛けた。

 ニュースは前日17日の同党の石破茂幹事長発言を指す。石破氏は上関原発について、安全性追求と住民理解を条件としながら「建設を妨げる理由はない」と明言。岸氏も「(上関原発)ノーを決めるタイミングではない」と強調。「プロセスが何ら示されていない」と野田政権の原発ゼロ方針を批判した。

 これに対し、民主党前職の平岡秀夫氏(58)は原発推進よりも新エネルギー普及に軸足を置く。「上関は原発を新増設しない原則の適用対象」とする党の方針に沿う立場を明確にする。

 平岡氏は、地元岩国市での街頭演説で「党は新増設は認めないと明確にしている」と説明する一方、地域振興策を講じることをその前提に掲げる。後援会報でも「脱原発は可能だ」との考えを強調し、新エネルギーの普及による経済成長や活性化を訴える。

 こうした両党の姿勢を、共産党新人の赤松義生氏(58)は「財界の言いなりではないか」と批判。陣営も「危険な原発の全停止を求めているのは共産党だけだ」と強調する。

 福島の事故後、野田政権は新増設を認めないとするエネルギー戦略を掲げたが、閣議決定は事実上見送り。関西電力大飯原発(福井県)再稼働や、中電島根原発3号機(松江市)などの建設継続も認めた。脱原発の世論と経済界との板挟みで、民主党政権は迷走を深めるように映る。

 民主党候補に投票予定の上関町の50歳代男性は「民主党の方針はぶれている。今こそ原発ゼロへの明確な道筋を示してほしい」と注文する。

 一方で同町の70歳代の男性は「われわれの思いをくんでくれるのは自民党しかない」。原発をどうするか10年以内に結論を出すとする同党の基本政策に「上関の建設を早く断言して」と願う。

 建設計画浮上から30年。対立を続けてきた地域は原発の是非に再び混迷を深めている。

(2012年11月21日朝刊掲載)

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