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[イワクニ 地域と米軍基地] 協定書開示 相次ぎ「却下」 日米が共同使用 愛宕山地区の運動施設

米軍の意向理由に岩国市

神奈川・逗子市は公開 市民団体が批判

 岩国市愛宕山地区の運動施設を日米共同で使うため米軍岩国基地と交わした協定書の公開を市に求めた請求が、相次いで「却下」されている。市民団体代表たちから少なくとも4件の請求があったのに対し、市は1月下旬までに、米軍の反対の意向を受けていずれも非開示とした。一方、同じく日米共同使用の神奈川県逗子市の自然公園では、同市は協定書を公開している。異なる対応に市民団体から批判の声が上がっている。(松本恭治)

 運動施設は、岩国への空母艦載機移転に伴い国が整備。昨年7月に完成した野球場「絆スタジアム」などがあるエリアが米軍へ提供され、市と基地は10月、維持管理や運営に関する協定を結んだ。その中で「協定は関係する当事者間の合意なしに公表してはならない」と規定。このため市は協定を結んだ後、全文ではなく概要版を市議会や地元の報道機関に示した。

「信頼損なう」

 基地監視団体リムピース共同代表の田村順玄・岩国市議は10月、市情報公開条例に基づき協定書の開示を請求。今年1月までに他の市民団体などの3人も同様に請求したが、市はいずれも非開示と決めた。4人のうち3人は今月14日までに市に不服審査請求し、残る1人も対応を検討している。

 なぜ市は公開しないのか―。不服審査請求に対する市側の弁明書によると、市の意見照会に対し、基地は「協定は日米合同委員会の合意に直接関係し、その一部を成す」と反対。協定締結に立ち会った中国四国防衛局も同調した。市は「合意なしに公表した場合、協力・信頼関係が著しく損なわれる」と判断した。

 概要版が既に公になっていることもあり、請求者はいずれも「少なくとも部分開示すべきだ」と訴える。しかし、基地はそれにも応じない構えだ。

 市都市建設部は「概要版は全文とほぼ同じ内容」と説明する。ただ、市内部からは「開示できるものならしたいが、国同士の関係にも影響しかねない」と苦渋の声も聞かれる。

トラブルなし

 日米共同使用の運動施設は、岩国が全国2例目。最初のケースである逗子市の「池子の森自然公園」を巡っては、同市は開園前の2014年、協定書などの全文を市議会に示した。市によると、公開に関し米軍との間でトラブルはなかったという。

 岩国市に開示請求した一人、市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典顧問は「逗子市で公表され、岩国市で否定されるのは、米軍の対応に差別があると言わざるを得ない」と強調している。

愛宕山地区の運動施設
 米軍岩国基地の西に位置し、名称は「愛宕スポーツコンプレックス」。米軍と市民の共同使用を前提に国が約150億円をかけて整備した。野球場「絆スタジアム」やソフトボール場などを備えたエリアが昨年11月、日米合同委員会合意を経て共同使用を開始。陸上競技場やコミュニティーセンターなどを備えたエリアも2月末に完成し、同様の手順を踏んで共同使用される予定。

(2018年3月20日朝刊掲載)

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